研究課題
基盤研究(B)
近年、血小板が、止血作用に加えて多様な生命現象において重要な貢献を果たしていることが明らかにされてきた。本研究では、巨核球における転写因子NF-E2の機能解析を軸として、血小板とその母細胞である巨核球が、炎症の病態形成に果たす役割の解明に挑む。炎症による巨核球の変化を検討し、巨核球が生体内の炎症性シグナルに応答する分子メカニズムを明らかにする。母巨核球の応答に伴い、産生される娘血小板に現れる変化を機能的側面から検討し、血小板が炎症の病態形成に及ぼす影響を明らかにする。これらの解析から、炎症の増悪、遷延化のメカニズムとして「巨核球-血小板炎症サイクル」を検証し、炎症の収束を促進する治療法開発における標的としての有効性を検討する。本年度は、マウス肺がん細胞株3LL細胞を用いた移植実験を実施し、担癌状態におけるp45の蓄積量とその標的遺伝子の発現を調べた。当初は、担癌状態のマウスでは、巨核球におけるp45の発現が上昇し、それに伴って、その標的遺伝子の発現も上昇するということが観察されていた。しかし、その後実験を繰り返すうちに、巨核球におけるp45の発現誘導が顕著に観察される場合と、それほどでもない場合とのばらつきが大きいことが判明した。一方、NF-E2活性が減弱しているp45^<-/->:ΔNTDTgマウスでは、NF-E2活性が正常であるp45^<-/->:p45Tgマウスに比較して、血小板の機能が低下し、かつ、メラノーマ由来のB16-F10細胞株の肺転移が顕著に抑制されるという結果が得られた。この結果から、p45が血小板の活性化能を規定し、血小板の活性化能はがん細胞の肺転移に大きく影響を与えることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
マウス肺がん細胞株3LL細胞の移植による、巨核球でのp45の発現促進が期待したほど明確に認められなかったが、p45変異体を発現する遺伝子改変マウスを用いた実験では、予想通りの成果が得られた。
担癌状態におけるp45の遺伝子発現をより明確に観察するために、3LL細胞よりもさらに巨核球の増加が顕著に観察されることが報告されているマウス卵巣がん由来の細胞株、ID8VEGF164とIG10ip1を利用することにする。これらの細胞は、MD Anderson Cancer CenterのSood, Anil K Sood博士より分与を受けている。
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進した事に伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額と合わせて平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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