研究課題/領域番号 |
24390078
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
古川 鋼一 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80211530)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シグナル / 細胞膜 / 糖脂質 / リガンド / 分子間相互作用 |
研究実績の概要 |
細胞膜複合糖質の糖鎖と特異的リガンドとの相互作用に基づく、細胞シグナルの生成メカニズムについて、新しいリガンド分子を同定して、それらの細胞膜表面における新規シグナルとその意義を検討した。まずグリオーマ細胞におけるGD2、GD3と相互作用する分子、CD44、インテグリンalpha3、EphA、PC1等を同定して、グリオーマの悪性形質とシグナルに及ぼす影響を解析した。EphAはリガンド分子EphrinA1との結合によって、Akt、Erk1/2などのシグナル活性化が大きく修飾されることが分かった。また、マウスの培養アストロサイトにPDGFBを導入しGD3+とGD3-の細胞群に分けて比較検討したところ、GD3の発現がPDGF受容体alphaの発現を著明に誘導するとともに、Yesのチロシンリン酸化を増強することで、paxillinの活性化に至ることが判明した。この、GD3/PDGFRalpha/Yes/Paxillin axis の活性化が、グリオーマに著明な浸潤・増殖能のシグナル基盤となっていることが、培養細胞のラメリポデイアやグリオーマ組織の辺縁部での共局在の観察によって強く示唆された。 一方、メラノーマ細胞において、メラノーマ関連糖脂質GD3と結合する膜分子neogeninの腫瘍悪性シグナル生成における役割をさらに検討した。ガンマセクレターゼにより切断されたneogeninの細胞質断片が結合して制御する標的遺伝子の網羅的同定のためにChIP-Seq解析を行い、既知のRaptor、CCM2、MACF1等に加えて、約20種の遺伝子を同定した。これら多くが、GD3発現細胞及びNeogenin 断片の導入・発現細胞において発現亢進することが、qRT-PCRによって明らかになった。細胞免疫染色によって、GD3発現細胞でNeogeninとガンマセクレターゼの共局在が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グリオーマ細胞や悪性黒色腫(メラノーマ)細胞に特徴的に発現する酸性糖脂質、GD3やGD2を標的としたEMARS (Enzyme-Mediated Activation of Radical Sources) 法と質量分析(MS)によって、糖脂質糖鎖の近傍二存在して相互作用する分子群を多く同定できた。また、実際の物理的相互作用について、免疫共沈降法などにより証明することができ、さらに第3の分子が加わった複合体の形成などが示されて、めざした内容を実現することができている。その点で、概ね順調に進展していると考える。一方、それらの相互作用の帰結として、細胞内シグナルと細胞形質の変化に関しても、過剰発現やsilencing あるいは免疫共染色等によって、機能的な意義が具体的に示されて、とくに癌細胞における役割が明らかになったことで、治療応用の可能性が示されたことは重要な展開であり、さらに発展させたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
グリオーマにおけるGD3、PDGF受容体alpha、SrkファミリーキナーゼYes nの3分子の複合体が、in vivo 腫瘍組織の辺縁部で検出されることから、腫瘍の外方への浸潤において重要な働きをしている可能性が考えられる。よって、これらの分子複合体の形成を抑制し破壊する方策を検討して、治療応用に繋げたい。 また、メラノ-マにおけるneogeninの細胞内ドメインにより転写活性化を受ける遺伝子群が確認できたなら、それらがGD3の機能の実行分子である可能性が高いので、その中からとくに癌悪性形質に関わる分子に焦点化して、治療応用の方向を明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
グリオーマ細胞においてガングリオシドと相互作用する分子として同定した分子群の機能解析が、そのメカニズムの究明という点で残された課題があるので、それらの網羅的な解析を継続発展させる事が必要なため。 メラノーマにおけるneogeninやその他のガングリオシド関連分子の細胞内局在の形態学的解析にもまだ残された点があり、解析が必要なため未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
糖脂質生成シグナルの解析と結果のまとめのために、細胞培養、生化学的解析、イメージング解析、実験動物代、論文執筆と投稿等のための消耗品等の購入に充てる。さらに、これらの課題を遂行するために必要な研究補助のための費用とする。
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