研究課題
細胞内の蛋白質ホメオスタシス容量の増減は、遺伝的変異または外的環境変化により蛋白質凝集体が蓄積するかどうかを決める。従来、ストレス条件下で活性化され、蛋白質ホメオスタシス容量を増加させると考えられていた熱ショック因子(HSF)が、非ストレス条件下でもその容量を調節していることが示唆されてきた。本研究では、常にDNA結合型であるHSF4の活性調節機構を解明することで、非ストレス条件下での蛋白質ホメオスタシス容量の調節の分子機構を明らかにし、「HSFが生理的な蛋白質ホメオスタシス容量を調節する」という新たな概念を確立し、蛋白質ミスフォールド病の新たな治療ターゲットを提案することを目的とする。これまでに、HSF4と複合体を形成するSDCCAG3がHSF4のリン酸化を介してその転写活性化能の調節を行うことが示唆されてきた。今回、HSF4-SDCCAG3が作動する経路を探索した。HSF4をノックダウンしたMEF細胞を用いてマイクロアレイ解析を行い、HSF4の新規標的遺伝子群を同定した。MEF細胞におけるHSF4蛋白質の発現量は、レンズと比較して低レベルであるにもかかわらず、ノックダウンにより予想以上に多くの遺伝子で有意な発現量の変化が認められた。同様にしてHSF1またはHSF2をノックダウンにより同定した遺伝子群とHSF4の標的遺伝子群を比較したところ、HSF4により制御を受けている遺伝子群の約60%がHSF1またはHSF2の標的遺伝子と共通の遺伝子であった。さらに、HSF1、HSF2、HSF4のいずれのHSFからも制御を受けている共通の標的遺伝子群も同定された。以上の結果から、HSF4は正常な生育条件下のMEF細胞においても、多くの標的遺伝子の転写調節に関わっていることが示唆された。HSF4-SDCCAG3経路によるこれら遺伝子群の転写調節機構をさらに解明していく。
3: やや遅れている
HSF4とSDCCAG3の相互作用する点変異体の同定に手間取っている。そのために、その後に予定しているHSF4-SDCCAG3によるクロマチン構造の調節にまで到達できなかった。
HSF4により転写調節を受けるターゲット遺伝子群を同定できたので、それらのプロモーターのクロマチン構造の調節におけるHSF4およびSDCCAG3の役割の解明を早急に進めていく。
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