研究課題/領域番号 |
24390082
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
澤 智裕 熊本大学, 生命科学研究部, 准教授 (30284756)
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研究分担者 |
赤池 孝章 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (20231798)
吉武 淳 熊本大学, 生命科学研究部, 研究員 (70414349)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 活性酸素 / 酸化ストレス / シグナル伝達 / レドックス / 親電子 |
研究概要 |
活性酸素は、酸化ストレスを介した毒性因子としてだけでなく、精密に制御されたシグナル伝達機構の担い手であることが明らかになりつつある。活性酸素の代謝から生成する親電子性物質は、活性酸素シグナル受容蛋白質のシステイン残基の翻訳後修飾をもたらし、シグナル制御において重要な役割を果たしている。本研究では、親電子性物質に対する新しい分解・代謝制御分子として、硫化水素および関連化合物に注目し、活性酸素シグナルの制御における役割を明らかにすることを目的としている。ニトロ化環状ヌクレオチドである8-nitro-cGMPは、細胞内の活性酸素・一酸化窒素の産生亢進にともなって生成するユニークな内因性の親電子物質である。本年度は、この8-nitro-cGMPと硫化水素との反応を解析した。試験管内で、8-nitro-cGMPと硫化水素ナトリウムを反応させると、8-nitro-cGMPが減少するとともに、新しい反応産物が生成した。吸収スペクトルならびに精密質量分析から、この反応産物が、ニトロ基がメルカプト基に置き換わった8-SH-cGMPであることが明らかとなった。さらに、8-SH-cGMPの生成は、重金属(鉄など)と他の低分子量チオール化合物(グルタチオンなど)の添加により著しく増強した。このことから、硫化水素、金属、チオール化合物から、8-nitro-cGMPの分解に関わる活性種が生成していることが示唆された。8-nitro-cGMPから8-SH-cGMPへの変換は、各種培養細胞においても確認され、さらにその活性は、システイン代謝酵素であるシスタチオニンbetaシンテース(CBS)および、シスタチオニンgammaライエース(CSE)に大きく依存していた。以上のことから、硫化水素による親電子シグナルの制御機構として、親電子物質のスルフヒドリル化(SH化)が重要であることをはじめて明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度交付申請時に計画であった8-nitro-cGMPと硫化水素との反応機構を明らかにし、さらにその反応から生成する新規な化合物(8-SH-cGMP)を世界に先駆けて明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
1.硫化水素ならびに関連チオール化合物に対する精密定量分析法を確立し、それを用いて細胞からの硫化水素イオン生成の定量解析を行う。 2.8-nitro-cGMPを介したレドックスシグナル伝達に対する制御因子の作用解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述のように8-nitro-cGMPの分解に対して、硫化水素の作用が共存する金属とチオール化合物によって促進することが分かった。そのため、その活性種の合成を開始したが、その合成が年度をまたいでいるため、予算の一部を次年度に繰越した。次年度は、これら新規化合物を含めて解析を行う。
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