研究課題
活性酸素は、酸化ストレスを介した毒性因子としてだけでなく、精密に制御されたシグナル伝達機構の担い手であることが明らかになりつつある。活性酸素の代謝から生成する親電子性物質は、活性酸素シグナル受容蛋白質のシステイン残基の翻訳後修飾をもたらし、シグナル制御において重要な役割を果たしている。本研究では、親電子性物質に対する新しい分解・代謝制御分子として、硫化水素および関連化合物に注目し、活性酸素シグナルの制御における役割を明らかにすることを目的としている。ニトロ化環状ヌクレオチドである8-nitro-cGMPは、細胞内の活性酸素・一酸化窒素の産生亢進にともなって生成するユニークな内因性の親電子物質である。前年度まで、8-nitro-cGMPと硫化水素との反応から8-SH-cGMPが生成し、さらに8-SH-cGMPの生成は、反応系に低分子チオールと金属が共存すると著しく促進することを報告した。そこで、硫化水素、低分子チオール、金属の反応から生成する活性種の同定を試みた。その結果、上記反応において、低分子チオールにイオウが付加したパースルフィドが生成していることが質量分析による解析から明らかとなった。さらに生成したパースルフィドが強力に8-nitro-cGMPから8-SH-cGMPへの変換をもたらすことがわかった。これらの結果は、親電子物質によるレドックスシグナル伝達においてパースルフィドが重要な役割を担っている可能性を示唆している。
1: 当初の計画以上に進展している
親電子物質を分解代謝する新規な物質としてパースルフィドを同定できたため。
パースルフィドによるシグナル伝達経路の解析を行う。
パースルフィドの同定に必要な標準試料の合成を開始したが、その合成が年度をまたいでいるため、予算の一部を次年度に持ち越した。次年度はパースルフィドなどの新規化合物を含めてそれらによるシグナル伝達の解析を行う。このための標準物質合成に用いる出発原料と有機溶媒及び分析カラムの購入にあてる予定である。
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