研究課題
活性酸素は生体内のエネルギー代謝(呼吸鎖)や感染防御過程において発生する一連の反応性分子種である。これまで活性酸素は酸素毒性の要因となる有害物質として取り扱われてきたが、近年になり、活性酸素が細胞内シグナル制御をはじめとする多彩な生理活性を持つことが明らかとなってきた。さらに我々は最近、活性酸素の作用を負に調節する制御因子の探索を行う中で、システイン代謝に関わる酵素であるcystathionine β-synthase (CBS)とcystathionine γ-lyase (CSE)が活性酸素シグナルの制御に密接に関わることを発見した。本研究において、CBSやCSEによる活性酸素シグナルの制御機構を解析した結果、両酵素がシステインの酸化型2量体であるシスチンを基質として、システインチオール基(Cys-SH)にさらに過剰なイオウ原子が付加したシステインパースルフィド(Cys-SSH)を生成していることを発見した。そこで、タンデム質量分析法に当該分子のケミカルライブラリーを用いた網羅的な同定・解析システムを構築してより詳細に解析したところ、驚くべきことに、生体内には、システインのみならず、ホモシステイン、グルタチオン、さらにはタンパク質システイン側鎖など様々な分子様態でパースルフィドが存在することや、その細胞内濃度がサブミリモーラーで豊富に存在すること、また付加するイオウ原子が複数あるもの(Cys-S(S)nH;ポリスルフィド)も存在することが明らかとなった。これらの結果は、細胞内におけるパースルフィドの存在を、分子種・濃度レベルで明らかにした初めてのものであるとともに、酸化ストレスの極めて重要な制御分子であることを示しており、今後のさらなる検討が期待される。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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