研究課題/領域番号 |
24390086
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
中山 淳 信州大学, 医学系研究科, 教授 (10221459)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 胃癌 / 慢性炎症 / 腺粘液 / 糖鎖遺伝子 / ノックアウトマウス |
研究概要 |
αGlcNAcは胃腺粘液に特徴的な糖鎖であり、これまでに我々はこの糖鎖を欠損したA4gntノックアウト(KO)マウスの胃幽門粘膜では慢性炎症を基盤に分化型腺癌が自然発症することを見出し、αGlcNAcが胃癌に対する腫瘍抑制分子としての役割を担っていることを明らかにした。本研究の目的はαGlcNAcによる胃癌発生の制御機構を解明することである。平成24年度はA4gnt KOマウスにおいて腫瘍の発生が胃幽門粘膜のみに限られていることに着目し、HID-AB染色を行うことでA4gnt KOマウスの幽門部では野生型マウスと比較し、スルフォムチンの産生量が特異的に多いことを見出した。次に、硫酸化糖鎖に対する質量分析を行うことで、A4gnt KOマウスの胃粘液ではο-グリカンのコア2分枝部に存在するGlcNAcに硫酸基が結合していることを示した。さらに定量PCR法により、GlcNAcの硫酸化に関わる3種類の硫酸転移酵素であるGlcNAc6ST-1、GlcNAc6ST-2、GlcNAc6ST-4をそれぞれコードする遺伝子Chst1、Chst4、Chst7の中で、Chst4 mRNAのみがA4gnt KOマウスの胃粘膜で野生型マウスに比べて有意に増加していることを明らかにした。以上の結果よりA4gnt KOマウスでは幽門部で多く産生された硫酸化糖鎖が胃癌の発生を促進している可能性が示唆された。そこでこの仮説を検証するためChst4 KOマウス(静岡県立大学川島博人博士より供与)とA4gnt KOマウスを交配し、A4gnt/chst4ダブルKO(DKO)マウスの作製を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胃癌発生の制御に関わる候補分子として硫酸化糖鎖を見出し、A4gnt/Chst4 DKOマウスの作製を開始することができた。
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今後の研究の推進方策 |
A4gnt/Chst4 DKOマウスの解析が中心となるが、A4gnt KOマウスの胃癌発症におけるTNF並びにdectin-1の役割解明に向けた研究、並びにヒト胃癌におけるαGlcNAcの発現意義に関する研究、等も合わせて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画で見込んだ消耗品類を実際には安値で購入することができたので次年度使用額が生じた。持ち越した次年度使用額は平成25年度に消耗品費と合わせて使用する。
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