研究課題/領域番号 |
24390086
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
中山 淳 信州大学, 医学系研究科, 教授 (10221459)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 胃癌 / 腺粘液 / ノックアウトマウス / バレット食道 |
研究概要 |
平成24年度の研究成果でA4gntノックアウト(KO)マウスの幽門腺細胞では硫酸化糖鎖の産生が亢進していることが明らかとなり、硫酸化糖鎖が胃癌の発生を促進している可能性が示唆された。この仮説を検証する為、平成25年度はA4gnt KOマウスとChst4 KOマウスを交配してA4gnt/Chst4 ダブルKOマウスを作出、HID-AB染色を行うことでこのマウスの胃粘膜で硫酸化糖鎖の消失が確認できた。今後、このマウスを経時的に飼育し、胃粘膜の病理所見を解析する予定である。また、平成25年度はヒト胃癌を対象として、αGlcNAcの消失が胃癌の悪性度と関連するか否かについて免疫組織化学的に解析した。αGlcNAcはそのコア蛋白質であるMUC6を発現した分化型胃癌54症例中33症例において陰性であり、αGlcNAcの消失は腫瘍の壁深達度、病期、静脈侵襲、癌特異的5年生存率と有意に相関していた。一方、MUC6陽性の未分化型胃癌48症例中22症例でαGlcNAcは陰性であったが、αGlcNAcの消失と臨床病理学的因子並びに生存率との相関は認められず、胃癌細胞におけるαGlcNAcの消失は分化型胃癌の悪性度と相関することが明らかになった。さらにバレット食道におけるαGlcNAcの発現低下はバレット腺癌の発生にも関わっているか否かについて検討した。バレット腺癌の周囲に存在するバレット食道35症例、対照群としてバレット腺癌を有さないバレット食道35症例に対してαGlcNAcとMUC6の免疫染色を行った。MUC6陽性のバレット食道におけるαGlcNAcの発現は、対照群と比較してバレット癌発症群において有意に低下しており、αGlcNAcの低下はバレット食道の発癌にも関与している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A4gnt/Chst4 ダブルKOマウスを作出し、このマウスの胃粘膜における硫酸化糖鎖の消失を確認できた。また、ヒト胃癌やバレット食道におけるαGlcNAc発現の病理学的意義を明らかにすることができた(Cancer Sci 105, 126-133, 2014; Histopathology 64, 536-546, 2014)。
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今後の研究の推進方策 |
1) A4gnt KOマウスとA4gnt/Chst4 ダブルKOマウスの胃粘膜を経時的に比較検討する。特に胃粘膜病変におけるマクロファージの浸潤及び血管新生の程度をF4/80抗体や抗CD31抗体を用いて免疫組織化学的に解析する。また、野生型マウスに比べてA4gnt KOマウスの胃粘膜で上昇していたCcl2等の炎症性ケモカインリガンド、Il11等のサイトカイン、Hgf等の成長因子の発現レベルを定量PCRにて解析する。 2) ヒト慢性萎縮性胃炎におけるαGlcNAcの発現低下と胃癌発生の関連について免疫組織化学的に解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画で見込んだ消耗品類を実際には安値で購入することができたことによる。 持ち越した次年度使用額は平成26年度に消耗品費と合わせて使用する。
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