研究課題/領域番号 |
24390088
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
安井 弥 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 教授 (40191118)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 消化管癌 / 治療抵抗性 / 癌幹細胞 / CAST法 / 診断・治療標的 / 胃癌 / 細胞生物学的機能 / FKTN |
研究概要 |
本年度は,消化管癌の治療耐性・癌幹細胞克服に向けた新規標的分子を同定し、機能を明らかにする目的で以下のとおり研究を実施した。 1)CAST法で同定した分泌蛋白コード遺伝子FKTNの発現・機能解析 胃癌細胞株(MKN-1、HSC57)に対するCAST法による癌特異的分泌蛋白コード遺伝子の発現解析から、両細胞株に共通して高発現する遺伝子として、FKTNを同定した。FKTNはfukutin蛋白をコードしており、福山型先天性筋ジストロフィーの原因遺伝子である。fukutinはシグナルシークエンスを有し、分泌蛋白質であり、細胞ではゴルジに局在する。FKTN・fukutinの過剰発現は、定量的RT-PCRでは32%(9/28)、免疫染色では43%(297/695)の胃癌で認められ、fukutin陽性例は、高分化腺癌に多く、深達度、リンパ節転移と有意な相関が認められた。さらに胃癌細胞株を用いたFKTNノックダウン系による機能解析において、浸潤能には影響はなかったが、細胞増殖が有意に抑制された。胃癌の新しい診断・治療標的である可能性が示された。 2)抗癌剤耐性癌細胞株に対するCAST法による網羅的遺伝子の発現解析 消化管癌の標準的抗癌剤である5-FUに対する耐性獲得とその克服にむけて、胃癌細胞株(MKN-45, MKN-74およびKATO-IIIの親株とそれぞれの5-FU耐性株)を対象とし、CAST法による網羅的膜蛋白・分泌蛋白コード遺伝子の解析を開始した。MKN-74に関しては数100クローンのシークエンスを終了しており、親株と耐性株で発現レベルの異なる複数の遺伝子を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画通り、胃癌細胞株のCAST解析から抽出した診断治療標的の候補遺伝子群について癌細胞、正常細胞・組織および胃癌臨床検体について発現特異性の検証を行なった。その中でFKTN/fukutinについては、研究概要に示したように様々な細胞生物学的機能解析を行なった。さらに、抗癌剤耐性の克服に向けた研究として、消化管癌の標準的抗癌剤である5-FUの注目し、胃癌細胞株3株の親株とそれぞれの5-FU耐性株を材料に、CAST法による網羅的膜蛋白・分泌蛋白コード遺伝子の解析を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従って実験を推進する予定である。さらに、抗癌剤耐性の克服に向けた研究として、消化管癌の標準的抗癌剤である5-FUの注目し、胃癌細胞株3株の親株とそれぞれの5-FU耐性株を材料に、CAST法による網羅的膜蛋白・分泌蛋白コード遺伝子の網羅的発現解析とそこから同定される新規抗癌剤耐性関連遺伝子の機能解析ならびに臨床病理学的解析を行なうこととした。技術的、設備的には問題なく遂行することができる。
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次年度の研究費の使用計画 |
CAST法による網羅的遺伝子発現解析において、シークエンスの経費が削減でき、また、効率よく候補遺伝子を同定できたために、学術研究助成基金において未使用額が生じた。 抗癌剤耐性の克服に向けた研究として行なう胃癌細胞株の親株と5-FU耐性株に対するCAST解析と候補遺伝子の機能解析に充てる計画である。
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