研究概要 |
「研究の目的」膵臓がんは予後が著しく不良な疾患である。膵臓がんは家系内集積性がある事が知られ、その発症に遺伝的要因が強く関与していることが示唆される。家系内集積を示す膵臓がんは家族性膵臓がんとよばれるが、その頻度や遺伝形式、原因遺伝子は不明である。本研究は、全ゲノムエクソンシーケンス法を用い、ゲノム内の全遺伝子の遺伝子変異を網羅的に明らかにし,同一家系内非罹患者の遺伝子配列と比較することによって家族性膵がんの原因遺伝子を同定する事を目的とする。 「研究実施計画と結果」 1.説明と同意、血液検体の収集と保存(清水、古川) 第一度近親者内に二人以上の膵臓がん罹患者がいる家族性膵臓がん患者・家系内対照者に研究の意義を説明し,自由意志のもと研究参加への同意を得て、都合15家系より血液検体を収集した。 2.全ゲノムエクソン配列解析(古川) 5家系11人のゲノムDNAの全エクソン解析を行った。解析には備品で購入したライブラリービルダーによりライブラリーを構築して次世代型シーケンサーSOLiD(Life Technologies)を用いて行った。平均outputは5G塩基、平均カバレージ45でデータを得た。マッピングからSNPコール行い1検体あたり4万個程度のSNPコールを得,うち、1万5千個程度が非同義性SNPであった。また、1万6千個程度の挿入欠失を見出した。これらにおいて罹患者と家系内非罹患者のSNPを比較し,罹患者のみに認められるSNPを複数見出した。遺伝子単位でSNPコールをソートしてSNPが集中している遺伝子を検索した。結果、遺伝子Aは5家系中3家系で罹患者のみに認められ,うち1罹患者においてはnonsense SNP)となっていた。この遺伝子Aは蛋白-蛋白結合ドメインを持ち,SNPは結合ドメイン内に認められ,機能的に障害性であることが示唆された。
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