研究概要 |
「研究の目的」膵臓がんは予後が著しく不良な疾患である。膵臓がんは家系内集積性がある事が知られ、その発症に遺伝的要因が強く関与していることが示唆される。家系内集積を示す膵臓がんは家族性膵臓がんとよばれるが、その頻度や遺伝形式、原因遺伝子は不明である。本研究は、全ゲノムエクソンシーケンス法を用い、ゲノム内の全遺伝子の遺伝子変異を網羅的に明らかにし,同一家系内非罹患者の遺伝子配列と比較することによって家族性膵がんの原因遺伝子を同定する事を目的とする。 「研究実施計画と結果」 1. 全ゲノムエクソン配列解析(古川) 2. 候補遺伝子異常の検証(古川) 20家系を集積し,家系内罹患者,非罹患者のcase-controlの対として血液から調整したDNAを用いて次世代シーケンサーを使った全エクソン解析を行った。既知の家族性膵臓がん関連遺伝子であるBRCA2, PALB2, STK11, CDKN2A, ATMの異常についてまず検討し,BRCA2の生殖細胞ノンセンス変異を一家系に、BRCA1の生殖細胞ミスセンス変異を別の1家系に認めた。BRCA2ノンセンス変異は機能障害性で疾患原性の変異としてデータベースに登録されていたがBRCA1ミスセンス変異については疾患原性は不明とされているものであった。他にこれら既知の遺伝子に原因と考えられる異常は認められなかった。さらに、dbSNP, 1000 Genome dataと比較して,稀な生殖細胞変異の絞り込みを行った。前年度に同定したものを含め,さらに候補となるものを複数同定し、Sanger法による確認を行った。また、集積した家族性膵臓がん家系においては膵管内乳頭粘液性腫瘍が多く認められることが明らかとなったため、膵管内乳頭粘液性腫瘍に特有の体細胞性変異を来すGNAS, RNF43遺伝子について切除標本において解析し,孤発性の例と比較検討した。
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