研究課題
基盤研究(B)
アスベスト繊維は繊維状鉱物であり、耐火性、耐摩耗性、耐酸1生が優れた素材であったため、前世紀に世界中で多量に使用された。しかしながら、中皮腫との関係が明らかとなったため、1987年にはWHOから第1種発がん物質との指定を受けた。日本では、クボタショック後に2006年に全面禁止となったが、本腫瘍の特徴は潜伏期が30年~40年と極めて長いことであり、日本の中皮腫ピークは2025年であり、今後40年間に10万人以上の患者の発生が予想される。診断後予後の悪い本腫瘍は、予防ならびに早期発見が極めて重要と考えられる。主として使用されたアスベストには、白石綿、青石綿、茶石綿がある。私たちは、これまでにラットへの腹腔内への3種のアスベストの投与がヒトの病態に類似した優れたモデルとなることを示してきた。特に、中皮局所の鉄過剰病態が重要と考えられた。今年度は、これまでに収集してきたラット悪性中皮腫を詳細に解析すると同時に、瀉血、鉄を除くための鉄キレート剤の投与、水素水の投与の3種の方法に予防効果があるかどうかを評価するための実験を開始した。中皮腫においては、特に肉腫型の悪性度が高いことが知られているが、上皮型と肉腫型の差を規定する遺伝子探索のため、発現アレイ解析を行った。すると、種々の候補遺伝子が明らかとなったため、それを現在検証している。一部の遺伝子産物は血清内に中皮腫が明かとなる前に出現するため、早期診断に役立つ可能性が示唆された。予防実験はまず16週に渡る最大許容介入の条件決定試験が終了し、本予防試験も進行している。また、アスベストに吸着しやすいタンパク質の解析を行い、アスベストの種類により異なることを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
予定通りに実験は施行され、成果も得られている。アスベストの発がん機構として過剰鉄が重要であることが判明し、論文として公表した。
当初の計画に沿い、中皮腫を予防するための動物実験を引き続き実施する。来年度中には大まかなデータがそろうと予想している。
当初の計画に沿い、消耗品、動物飼育費、実験補助費、研究発表費などに使用する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (14件) 備考 (1件)
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http://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical/dbps_data/_material_/nu_medical/_res/topix/2012/CHRYSOTILE.pdf