研究課題
天然の繊維状鉱物であるアスベストは、工業用マテリアルとして優れた性質を有するため、前世紀において世界中で多量に使用された。しかし、曝露された場合、長い潜伏期を有する予想外の中皮腫発がん性のため、多くの国が長期にわたる社会的問題に直面することとなった。中皮腫はその発生部位の解剖的な特徴より、進行してから見つかることが多く、また治療プロトコールも未だに確立されていない。従って、アスベストに既に曝露されたひとにおいて、どのように発症を予防するかは極めて重要な問題である。最終年度においては、アスベストによる中皮腫発がんにおいて脂肪細胞が果たす役割を検討し、上皮型と肉腫型の差を決定する遺伝子を解析した。3T3-L1脂肪細胞株にアスベストを投与すると、中皮細胞がマクロファージとは異なり、細胞毒性を示さなかった。発現マイクロアレイ解析でMCP-1などの炎症促進性アディポサイトカインを分泌し、中皮腫細胞の増殖を支持することが判明した。次に、上皮型と肉腫型のラット中皮腫を使用して発現マイクロアレイ解析を行い、2つの組織型を決定している遺伝子を検討した。すると、CTGF(CCN2)が主要な責任遺伝子として選出された。CTGFは分泌されており、ベータカテニンならびにCTGF受容体のLRP6と悪循環のオートクラインループを形成していることがわかった。さらに、血清において中皮腫、特に肉腫型で高濃度であり、ラットの前向き試験では、血清CTGF濃度が高いほど中皮腫の発生が早いため、疾患マーカーあるいは治療標的となる可能性が示唆された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 6件) 備考 (1件)
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