研究課題/領域番号 |
24390095
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
浅井 直也 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80273233)
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研究分担者 |
永井 拓 名古屋大学, 医学部附属病院, 准教授 (10377426)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 記憶障害 / シナプス可塑性 / 蛋白リン酸化 / 疾患モデルマウス |
研究概要 |
1. Girdinと海馬依存性の長期記憶との関連性の解明 蛍光レポーターマウスとNestinプロモーター下にCreERT2を発現するトランスジェニックマウスを用いたin vivo蛍光標識と、ジーンガンによる蛍光色素トレーシングにより、海馬の顆粒神経細胞とC1領域の神経細胞を蛍光標識して観察を行った。野生型マウスとAktによるリン酸化部位の変異マウスとで比較したところ、樹状突起の発達が変異マウスで優位に悪くなっていること、スパインの大きさが変異マウスで優位に小さいことが判明した。これは記憶障害を神経形態学的に反映する所見と考えられる。現在、記憶刺激に対してのスパイン変化について解析準備中である。また、Aktによるリン酸化部位S1416以外のリン酸化修飾について個体レベルで調べるため、Srcによるリン酸化部位Y1799に変異を導入したノックインマウスを作成する事に成功し、現在F1が得られている。今後、記憶障害の有無を行動解析で調べるとともに、海馬神経の微細構造を解析する予定である。 2. Girdin変異マウスを用いた電気生理学的・生化学的解析 野生型マウスとAktによるリン酸化部位の変異マウスにて海馬神経の電気生理学的な解析を行ったところ、LTPが変異マウスで障害されている事が判明した。また、AMPAとNMDA受容体を介した反応性を調べたところ、NMDA受容体の反応が障害されている事が判明した。Aktによるリン酸化の上流で働く因子としてBDNFに注目して解析を行った。海馬神経の初代培養の実験系で、BDNF刺激によりAktの活性化とGirdin S1416のリン酸化が観察された。興味深い事に、NMDA受容体NR2BサブユニットY1472のリン酸化がGirdin S1416の変異により障害される事が判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Girdin変異マウスを用いて、神経形態学的な差異を明らかにすることができた。海馬での電気生理学的な解析を行い、記憶障害と合致するデータを得ることができた。また、Girdinのリン酸化による機能制御についても、NMDA受容体を介したメカニズムを示唆するデータが得られた。新たな変異マウスGirdin Y1799Fを作成する事ができて、現在解析の準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
in vivo神経ラベルの系を用いて、変異マウスでのシナプス構造の変化について更に詳細に解析するとともに、その分子メカニズムを明らかとする。リン酸化部位の新たな変異マウスについての行動学的な解析を行い、海馬依存的な記憶機能を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
Girdin Y1798F 変異マウスの作成が遅れ、表現型の解析がずれこんだため。 計画研究に沿って、組織学的・生化学的なGirdinの機能解析をさらに進めるとともに、新たに得られたGirdin Y1798F 変異マウスの解析のために必要な経費の使用を計画している。
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