研究課題/領域番号 |
24390097
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
木村 透 北里大学, 理学部, 教授 (50280962)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 生殖細胞 / 多能性 / 幹細胞 / 相互転換 / 分化誘導 |
研究概要 |
本研究では、「生殖細胞と多能性幹細胞の相互転換機構」を解明するために、次の1、2の研究を行った。 1、生殖細胞から多能性幹細胞へのリプログラミング 胎仔期の生殖細胞である始原生殖細胞は、増殖因子で刺激すると多能性をもつ幹細胞へと初期化される。一方、体細胞は、初期化因子群を遺伝子導入することで人工多能性幹細胞(iPS細胞)へと初期化される。近年、iPS細胞を誘導する初期化因子の機能を代替できる小分子化合物が同定されており、本研究では、これら小分子化合物が始原生殖細胞の初期化に及ぼす効果を解析した。その結果、iPS細胞の誘導には、最低3種類の初期化因子を遺伝子導入する必要があるが、始原生殖細胞はたった1つの小分子化合物で処理するだけで初期化できることを明らかにした。また、発生の段階により、異なる小分子化合物の組み合わせに反応することも見出した。 2、多能性細胞から生殖細胞への試験管内分化誘導系の確立と解析 これまでに、胚性幹細胞(ES細胞)からの試験管内における中胚葉分化誘導系において、Aktシグナルを制御することで、始原生殖細胞に似た細胞を分化誘導できることを示してきた。本研究では、様々なシグナルの阻害剤・活性化剤をスクリーニングすることで、MAPK(Mitogen-Activated Protein Kinase)シグナルを阻害すると、中胚葉分化誘導系で始原生殖細胞様細胞を誘導できることを見出した。中胚葉と始原生殖細胞は、発生の同じ時に同じ場所で分化することが知られている。しかし、始原生殖細胞は、中胚葉誘導シグナルを受けているにも関わらず、生殖細胞へと分化する。MAPKシグナルの活性化は、試験管内および生体内で中胚葉の分化に必須であることが示されており、我々の成果は、このシグナルの活性化と不活性化が、中胚葉と生殖細胞への運命づけを区別する可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの生育不全などにより、初期化実験に用いる胎仔の確保が遅れた。しかし、その後、十分な数のマウスを確保することができたので、初期化の研究を行うことができた。その結果、生殖細胞と体細胞の初期化のメカニズムの違いを示すことができた。また、試験管内におけるES細胞からの生殖細胞の分化誘導研究では、MAPKシグナルが、中胚葉と生殖系列への運命の分離を規定する可能性を示唆することができた。
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今後の研究の推進方策 |
マウスの生育不全などにより研究の遂行がやや遅れたが、現在、繰り越し申請の際に提出した様式C-26の「変更後の計画」に沿って順調に進行している。今後は、マウスから樹立した細胞を用いて、その性状を解析する段階に入るため、当初の予定まで研究の予定を早めることも可能であると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウスの生育不全などにより、初期化実験に用いる胎仔の確保が遅れた。 マウスの細胞を試験管内で初期化し、その後、その細胞の性状を解析するために、「物品費」として、消耗品(マウス飼育、研究試薬、培養器具・溶液、ウシ胎仔血清など)の購入に使用する。
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