研究課題/領域番号 |
24390099
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
片岡 寛章 宮崎大学, 医学部, 教授 (10214321)
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研究分担者 |
竹田 直樹 熊本大学, 生命資源教育支援センター, 助教 (90304998)
石田 洋一 明治薬科大学, 薬学部, 助教 (90510454)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 病理学 / 発がん / がん細胞微小環境 / 浸潤・転移 / HAI-1 / HAI-2 / マトリプターゼ / 遺伝子改変マウス |
研究概要 |
細胞周囲微小環境におけるプロテアーゼ活性は、多細胞生物の様々な生命現象に深く関与する。本研究では、細胞膜結合セリンプロテアーゼインヒビターHAI(HGF activator inhibitor type 1[HAI-1]とtype 2 [HAI-2])の上皮組織の病態形成(特に腫瘍)における意義を解析する。本年度は、腸管上皮発癌と膵癌細胞浸潤・転移におけるHAI-1の意義について検証すると共に、HAI-1発現低下が細胞周囲微小環境におけるプロテアーゼ活性に与える意義についての生化学的・細胞生物学的検討を行った。またHAI-2の生体内機能に関する検討を開始した。 (1)腸管上皮HAI-1 欠損マウスではAPC変異における腸腫瘍形成頻度が亢進し、また腸管化学発癌刺激による大腸発癌が亢進することを見出し、報告した(Cancer Res 2013)。 (2)高転移性膵癌細胞を用いて、HAI-1発現が浸潤・転移能に与える影響を検証し、HAI-1発現低下が細胞周囲マトリプターゼ活性亢進とPAR-2活性化を介して癌細胞の浸潤性を亢進させる可能性を示した(Cancer Sci 2014)。 (3)HAI-1発現低下が細胞周囲マトリプターゼ活性に与える意義についての生化学的・細胞生物学的検討を行い、報告した(PLoS One 2013, Am J Pathol 2013, J Histochem Cytochem 2014)。また、癌細胞におけるHAI-1発現低下が腫瘍随伴線維芽細胞遊走に関与する可能性についての解析を行い、HAI-1発現低下による細胞周囲マトリプターゼ活性亢進が線維芽細胞PAR-2を活性化し、細胞遊走を惹起する可能性について予備的データを得た。 (4)HAI-1ホモローグであり、やはり上皮細胞に広範は発現するHAI-2に関して、その生体内機能を解明するために条件付きノックアウトマウスの作製に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した研究計画に沿って研究を行い、腸管特異的HAI-1ノックアウトマウスを用いた腸管発がんにおけるHAI-1の意義については論文刊行に至ることが出来た。癌細胞株を用いた人為的HAI-1発現制御可能株の作製についても予定通り達成し、膵癌細胞株においてHAI-1発現が浸潤転移能に影響を与えることを示し、論文発表に至った。また、HAI-1発現低下が細胞周囲プロテアーゼ活性に与える影響に関する生化学的検討においても一定の成果を得た。また、HAI-1のホモローグであるHAI-2の発現が、やはり上皮細胞の機能に重要な役割を有することが予備実験で確認されたことから、当初の研究計画には含まれなかったが、HAI-2遺伝子改変マウス(条件付きノックアウト)の作成を開始した。HGF activatorの新規基質探索については、まだ成果を得るには至っておらず、継続中である。以上のことから、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
申請者が作成した条件付きHAI-1ノックアウトマウスの系が、HAI-1機能の研究に有効であることが示されたことから、今後も条件付きHAI-1ノックアウトマウスの系を用いたin vivo機能解析を継続していく。また、癌細胞膜上のHAI-1消失においてMT1-MMPが重要な役割を有することが示唆されたことから、MT1-MMPによるHAI-1切り出しによるHAI-1標的酵素の活性変動とHGFをはじめとする生理活性物質活性化の変化についても、種々の上皮系腫瘍細胞株とMT1-MMP発現誘導可能な不死化マウス腸上皮細胞株で検討する。さらに、HAI-1類似の膜型セリンプロテアーゼインヒビターで上皮細胞に広範に発現するHAI-2について、これが上皮細胞膜上におけるプロテアーゼ活性制御において重要な意義を有する可能性が示唆される予備実験結果が得られたことから、当初の研究計画には含まれていなかったHAI-2条件付きノックアウトマウス作成を行い、今後HAI-2の生体内機能解析にも取り組む。
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