研究課題/領域番号 |
24390100
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
中野 裕康 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70276476)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | c-FLIP / アポトーシス / ネクロプトーシス / 腸炎 / 肝炎 / TNFa |
研究概要 |
c-FLIP(cellular FLICE-inhibitory protein)はカスパーゼ8に相同性を有し、カスパーゼ8に会合することでアポトーシスを抑制する分子である。c-FLIPの全身的な遺伝子欠損マウスは胎生10.5日に致死となるために、これまで生体の恒常性維持における役割は十分には解明されていなかった。我々は腸上皮細胞や肝細胞で特異的c-FLIPを欠損したマウスを樹立したところ、いずれのマウスも出生後2日以内に致死となることが判明した。c-FLIPを欠損した腸上皮細胞や肝細胞はアポトーシスだけではなく、計画的なネクローシス(ネクロプトーシス)も亢進していることが判明した。TNFR1欠損マウスと腸上皮特異的c-FLIP欠損マウスを交配したところ、致死的な表現型は部分的にブロックされたことから、TNFシグナルが致死的な腸炎の発症には関与していることが示された。一方で、TNFR1欠損マウスと肝細胞特異的なc-FLIP欠損マウスを交配しても、致死的な肝炎は抑制されなかったことから、肝細胞死の抑制にはTNFシグナルのブロックだけでは不十分である可能性が示された。さらにインターフェロン誘導性肝細胞特異的c-FLIPの解析から、c-FLIPはTNFα,TRAIL,FasLなどから誘導される細胞死から肝細胞を防御する上で必須の因子であることが判明した。以上よりc-FLIPは腸上皮細胞や肝細胞のアポトーシスおよび計画的なネクローシスを抑制し、腸管や肝臓などの組織の恒常性維持に必須の役割を果たしていることを明らかとなった(Piao et al,Science Signaling 2012).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
腸上皮細胞や肝細胞特異的なc-FLIP欠損マウス、インターフェロン誘導性c-FLIP欠損マウスを樹立した。 またこれらの組織特異的c-FLIP欠損マウスは出生後早期に致死となることから、TNFR1欠損マウスとの交配も終了し、c-FHPの腸管および肝臓における役割を明らかにすることができた。さらに当初の予定より早くc-FLIPをX染色体ヘノックインさせたマウスを樹立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
c-FLIPをX染色体ヘノックインさせたマウスを樹立したところ、♂の個体は全個体が胎生致死となるが、♀は正常に発育したことから組織特異的c-FLIP欠損マウスと交配したが、c-FLIP欠損マウスの致死的な表現型をレスキューすることができなかった。c-FLLIPKIマウスで何故胎生致死となっているかを明らかにするために、ネクロプトーシスに必須の遺伝子であるRIPK3KOマウスとの交配で明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
肝細胞でc-FLIPの発現を低下させたマウス(このマウスは出生後も正常に発育する)に肝炎を誘導した時のマイクロアレイ解析が終了していないことから、今後施行する予定である。
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