研究概要 |
本研究は、これまで全く研究が進んで来なかった、マラリア原虫スポロゾイトのロプトリーに局在する分子に着目し、蚊の唾液腺侵入における当該分子の機能を解明することを目的として実施するものである。本年度は、12の候補分子について発現解析を行った。RON (rhoptry neck protein)3,4,5,6およびRALP1,RAP1,RhopH1,RhopHIA,RhopH2,RhopH3については、それぞれのタンパク質のC末端側にc-mycタグを融合させた組換えタンパク質発現原虫を作出した。RAMA,RON1については特異抗体を作成した。それぞれの組換え原虫を蚊に感染させた後、15,24日後に中腸と唾液腺を回収し、スポロゾイトにおけるタンパク質の局在を坑c-myc抗体あるいは特異抗体を用いた免疫電顕法により解析した。その結果、RON3,4,5,RALP1,RAP1,RAMAがスポロゾイトのロプトリーに局在することが明らかになった。次に、スポロゾイトにおけるRON4の役割を明らかにするために、スポロゾイト時期特異的発現抑制原虫の作出を行った。具体的には、ron4のプロモーター領域をメロゾイト特異的発現をする遺伝子のプロモーターに相同組換えにより置換する。発現抑制の確認の為に、RON4の組換えタンパク質を合成し、特異抗体を作成した。坑RON4抗体を用いて、スポロゾイトを鋳型にwestern blottingを行ったところ、スポロゾイトにおけるRON4の発現が極めて抑制されていることがわかった。そこで、遺伝子改変原虫を感染させた蚊の中腸、唾液腺より回収できるスポロゾイトの数を計測したところ、RON4発現抑制原虫では、唾液腺から回収されるスポロゾイトの数が顕著に減少していることがわかった。すなわち、RON4がスポロゾイトの唾液腺侵入に重要な役割を果たすことを始めて明らかにできた。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の未使用額1,353,230円は、既に講座で保有していた試薬等を本研究課題のために使用した結果、物品費が減額できたこと、および予定していた老朽化した機器の修理費用が本年度分で使用する必要がなかったために生じた。これらの金額を会わせた翌年度の研究費5,853,230円は物品費に2,753,230円、旅費800,000円、人件費1,500,000円、その他800,000円として使用する。
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