研究課題
本研究は、これまで全く研究が進んで来なかった、マラリア原虫スポロゾイトのロプトリーに局在する分子に着目し、蚊の唾液腺侵入における当該分子の機能を解明することを目的として実施している。昨年度にスポロゾイトのロプトリーに局在することを確認したRON3、RON5、 RAMAについて、それぞれのタンパク質の機能解析を行う為に、各分子についてメロゾイトでは発現するがスポロゾイトでは欠損するという遺伝子改変原虫の作製を試みた。そのため、標的分子のプロモーター領域をスポロゾイト期に発現しない他のマラリア原虫遺伝子のプロモーター領域と置換する方法を用いて、スポロゾイト期特異的発現抑制原虫を作製した。各タンパク質に対する特異抗体を用いたウエスタンブロッティング法および間接蛍光抗体法により、遺伝子改変原虫において標的分子がスポロゾイト特異的に発現抑制されていることの確認をおこなった。その結果、スポロゾイトにおけるRON3, RON5およびRAMAの発現が極めて抑制されていることが確認された。そこで、これらの遺伝子改変原虫を媒介蚊に感染させ、蚊体内で原虫を発育させた後に、中腸、胸腹部体腔液、唾液腺より回収したスポロゾイトの数を計測し、遺伝子改変原虫と野生型原虫のそれとを比較したところ、RON3発現抑制原虫は野生型と同程度に唾液腺への侵入を示したのに対し、RON5、RAMAの発現抑制原虫において、唾液腺から回収されるスポロゾイトの数が顕著に減少していることが明らかとなった。すなわち、RON2、RON4に加えてRON5、RAMAがスポロゾイトの唾液腺侵入に重要な役割を果たすことを初めて明らかにすることができた。
1: 当初の計画以上に進展している
昨年度に蚊の唾液腺に侵入するスポロゾイトのロプトリーに局在することが確認された分子を対象として、これらの分子を時期特異的に欠損する発現抑制原虫の作製を試みた結果、RON3、RON5、RAMAの発現抑制原虫の作製に成功した。さらに、これらの原虫の表現型を解析した結果、RON5とRAMAが唾液腺侵入に重要な役割を担うことを新たに見いだすことができた。
計画以上に順調に進行しているので、予定通り、他のスポロゾイトロプトリー分子についてもスポロゾイト時期特異的遺伝子発現抑制原虫を順次作成し、その表現型の解析を引き続いて推進する。
本年度の未使用額642,151円は、前年度未使用額1,353,230を本年度の予算に組み入れ、物品費として使用することをを計画したが、予定していた国際会議への参加を取りやめたこと、および物品費の使用が予定よりもやや少なかったことによって生じた。翌年度の研究費5,142,151円は物品費に3,142,151円、旅費500,000円、人件費1,200,000円、その他300,000円として使用する。
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