研究課題
本研究は研究開始当初の予定を変更し、シャーガス病の多様な病態の根幹となる「慢性化」の原因として病原原虫Trypanosoma cruziの“休眠”を仮定し、その分子基盤を目指した。T. cruziの休眠現象については、Iraluらが尿素分解酵素ウレアーゼによってシスト様の形態が誘導されたと報告しているのみである(Nature 204:486, 1964)。本研究によって、T. cruziの新たな形態が再確認され、これが生活環の中で何らかの生物学的意義を持つ可能性が示された。また、ウレアーゼに混入していたレクチンの一種コンカナバリンA(ConA)がシスト形成を誘導する本体であること、ConAによって原虫内部に空胞が生じ、細胞実質でオルガネラの分裂と娘細胞の形成が進むことを発見した。予備実験では、ConA以外の市販レクチン14種はシスト形成を誘導できないことから、ConAのみが認識するα-D-グルコースを介してシストが誘導されることが強く示唆された。また、ConAが結合する原虫因子としてtubulinおよびシステインプロテアーゼの一種cruzipainが予備的に行なったプロテオーム解析から示唆されている。シスト形成の生物学的意義としては、多くの昆虫寄生性トリパノソーマが生活環の中でシスト段階を持つこと、T. cruziについても昆虫―昆虫伝播が知られていること、および哺乳類体内での持続感染に貢献している可能性があること、等が想定される。今後の研究としては昆虫および哺乳類宿主体内において本形態を見いだし、その分子機序を明らかにする必要がある。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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