研究課題
トキソプラズマにおいて最近「細胞外」原虫でのみ形成されるオルガネラの存在が報告された。このオルガネラ(PLV/VAC)は原虫の細胞外環境適応能力を規定していることが示唆されている。申請者らは独立した研究によりこれらと類似のオルガネラを発見し、詳細な解析からこれらのオルガネラが3つのサブコンパートメントに区別できることを見出した。これらの3つのオルガネラに局在するタンパク質を探索した結果、VACにはTgCPLが、PLVにはrab5c、NHE3、VP1が局在しており、その後、PLVの分離に伴い、PLV1にはNHE3およびrab5cが、PLV2にはNHE3、VP1、AQP1、rab7がそれぞれ局在することを見出した。また、PLV2には水素イオンとカルシウムイオンが含まれていることも明らかにできた。また申請者らは抗マラリア薬として知られているプリマキンがPLV2の水素イオンおよびカルシウムイオンを細胞質内に遊離させる作用を持つことも見出した。そこで、その分子機構を検討するため、変異原を用いたプリマキン耐性トキソプラズマ原虫クローンを確立した。さらにその責任遺伝子を同定するため確立した4クローンの全ゲノム配列を決定し、親株と比較した結果、責任遺伝子としてTgCRTが同定できた。実際に変異型TgCRTをトキソプラズマに強制発現させるとプリマキン耐性が付与された。一方で局在解析の結果、TgCRTはPLV2ではなくVACに局在することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
トキソプラズマの情報の集積がやや遅れたので、その他のアピコンプレクサについての解析がやや遅れているが、おおむね順調に進展していると考える。
マラリア原虫解析についての共同研究が進行中である。
プリマキン耐性株の責任遺伝子同定のための全ゲノム配列解析が、当初の想定以上に容易に同定できたため。責任遺伝子であるTgCRTが予想外の局在を示したので、より詳細な局在解析が必要となった。繰り越し分はその解析のための予算としたい。
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