研究課題/領域番号 |
24390104
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
野田 公俊 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60164703)
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研究分担者 |
清水 健 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70312840)
八尋 錦之助 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80345024)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腸管出血性大腸菌 / SubAB / 小胞体ストレス / lipid-raft |
研究実績の概要 |
・腸管出血性大腸菌(EHEC)が産生する新たな毒素Subtilase cytotoxin (SubAB)は、小胞体中に存在するシャペロン蛋白質BiPを分解し、小胞体ストレスセンサー蛋白質PERKを介して、細胞障害性を誘導すると考えられる。本年度は、新たな宿主応答反応としてSubABがストレスグラニュー(SG)形成を誘導することを見出した。即ち、subAB遺伝子をノックアウトしたSTEC O113:H21株の培養上清を添加した細胞では、野生株の培養上清により誘導されるSGが観察されないことから、SubABがSG形成に必須であることが示唆された。また、PKC, PKD family蛋白質の発現抑制実験により、PKCとPKD1がSubABのSG形成に関与していることが明らかとなった。また、SubABのアポトーシス誘導に関与するDeath-associated Protein 1 (DAP1) の発現抑制においてもSG形成が阻害された。このSG形成はアルツハイマー病等の神経系疾患に関与することが知られている。SubABによるSG形成がEHEC感染症の病態形成にどのように関与しているか今後更に詳細に調べる予定である。 ・カルフォルニア大との共同研究により、SubABをツールとして新たに、ストレス下での転写翻訳制御機構を明らかにし、Scienceに掲載された。 ・一酸化窒素NOがEHECの志賀毒素産生に対する影響について解析した。EHECが産生する志賀毒素1(Stx1)と志賀毒素2(Stx2)は、共にNOによって産生量の亢進が認められた。更に、EHEC O157の持つNO還元酵素のタイプ(完全型、欠損型)が、NOによるEHECからの志賀毒素の産生制御に関与していることを明らかにした。以上の結果をまとめ、論文投稿した。また、完全型NO還元酵素遺伝子を保持するEHEC O157の進化の過程をその配列の有無から明らかにした。以上の結果は、宿主防御因子であるNOに対して、どのようにEHEC O157が対抗し、回避或いは攻撃するのか興味深い知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SubABによる、新たな宿主応答機構を解明できた。又、NOによるEHEC O157からの志賀毒素産生亢進機構の一端を明らかにし、論文投稿した(リバイス中)。
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今後の研究の推進方策 |
non-O157 EHEC感染における、SubABのストレスグラニュー形成の病態発症における役割を明らかにする。また、DAP1の細胞死、ストレスグラニュー形成での詳細な分子機構を明らかにする。 ROS (NO, H2O2) によるEHECからの志賀毒素産生機構を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入済試薬が予定より安価であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
学会参加の旅費として使用する。
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