研究課題
基盤研究(B)
結核菌のすみかはヒトであり、感染者の5-10%で、潜伏菌の再増殖が生じ結核が発症する。したがい活動性結核に加え、潜在性結核に対処することが結核の制圧につながる。潜在期において結核菌は、増殖を停止した休眠状態にある。これまでに申請者は、Mycobacterial DNA-binding protein1 (MDP1)などの結核菌蛋白質を同定し、それが休眠のバイオマーカーとなることを明らかにしている。これまでの研究成果を基に、疾患の潜在化の機構解明をベースに結核の潜在化の維持や誘導による感染制御法を提案する。休眠結核菌の確認として、イソニアジド(INH)とメトロニダゾル(MTZ)に対する薬剤感受性試験を行った。増殖菌はINH処理に感受性で、MTZ処理に、抵抗性を示した。しかし休眠菌では反対にINH処理で抵抗性で、MTZ処理に感受性を示した。休眠菌の脂質成分の構成を、薄層クロマトグラフィーを用いて解析した。その結果、休眠菌でトリアシルグリセロールの増加とTrehalose dimycolate (TDM)とTrehalose mono mycolate (TMM)の減少が観察された。上記の結果をもとに、蛋白質の二次元電気泳動で、増殖菌と休眠菌の産生蛋白質の相違を観察した。その結果、トリアシルグリセロール合成酵素の産生増強や、TDMやTMM合成に関わるAg85 complexの産生の減衰が観察された。一方、生体内結核菌潜在下好気的呼吸において電子のアクセプターなどとして働く鉄に、結核菌の増殖が依存していることから、鉄キレーターの作用を検討した結果、増殖の抑止に働くとともに、休眠に関わるMDP1の発現量の変動を誘導することが分かった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画に沿って、問題なくに進んでいる。
結核菌の増殖制御に関わる結核菌蛋白質、糖脂質、また宿主由来物質や細胞応答の検討を継続して行い、生体における結核の潜在化と発症における結核菌分子と宿主応答の関連を解析する。
結核菌の増殖制御に関わる結核菌蛋白質や休眠時に変動のある糖脂質合成酵素の産生をモニターする。また、鉄キレーターやサイトカイン、免疫細胞の疾患潜在化への影響を解析する。なお、実験消耗品を予定より安価で購入できたこと、および動物を使用した免疫学的解析を次年度以降にしたため、助成金の残額が生じた。
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Japanese Journal of Infectious Diseases
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