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2014 年度 実績報告書

結核の潜在化機構の解析と、潜在化を利用した新しい結核制圧戦略の提案

研究課題

研究課題/領域番号 24390106
研究機関新潟大学

研究代表者

松本 壮吉  新潟大学, 医歯学系, 教授 (30244073)

研究分担者 阿戸 学  国立感染症研究所, 感染部, 部長 (20392318)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワード結核 / 増殖制御 / 潜伏感染 / 休眠 / 蛋白質分子機能
研究実績の概要

結核は、2013年に150万人が死亡したように現在も最大級の細菌感染症である。結核菌のすみかはヒトであり、感染者(潜在性結核)の5-10%で、潜伏菌の再増殖が生じ結核が発症する。したがい活動性結核に加え、潜在性結核に対処することが結核の制圧につながると申請者は考え、潜在性結核のメカニズムを解析している。潜在期において結核菌は、増殖を停止した休眠(dormant)状態にある。これまでに結核菌の増殖停止の鍵となる蛋白質MDP1を同定し、それがヒト潜在性結核のバイオマーカーとなることを明らかにしている。これまでの研究成果を基に、疾患の潜在化の機構解明を目指すとともに結核の潜在化の維持や誘導による新しい感染制御法を提案することを目的としている。
結核潜在化の鍵分子の一つであるMDP1の発現を制御する宿主―ベクター系の構築を試行した。作成したベクターを弱毒のMycobacterium smegmatisに導入したが、MDP1の発現にともない増殖が顕著に抑制され、ベクターの改良が必要であることがわかった。現在、よりタイトに制御可能な宿主ベクター系を作成しており、結核菌の組み換え実験の大臣承認後、組み換え実験を実施する。
一方、結核菌感染者におけるMDP1を含めた結核菌抗原に対する抗体とT 細胞応答を検出した。その結果、ESAT6やCFP10などの結核菌抗原に対する抗体・T細胞応答は活動期において顕著であるのに対し、MDP1やHrpAに対する応答は、潜在性結核で顕著であることが判明した。IFN-gamma産生Th1細胞に加え、IgA応答が非発症者で旺盛であることが判明し、本結果の論文発表を行った。
また結核肉芽腫においてMDP1の発現部位に顕著に産生される宿主分子を同定した。試験管内の検討において本宿主分子は、結核防御に重要なサイトカインIFN-gammaの作用に関わるとともに、菌が細胞内増殖に利用する炭素源量を低下させる活性があり、結核の潜在化に関与する可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

結核潜在期抗原に対して、IgA応答が非発症者において有意に上昇していることや、新しい結核菌感染制御分子を見いだすなど、成果があがっている。

今後の研究の推進方策

結核菌遺伝子発現の制御をより正確に人為的に行う系を宿主―ベクター系を作成し、27年度には試験管内での結核の潜在化・菌の休眠に関わる分子の発現が及ぼす影響を明らかにしたい。分子発現をうまく制御できた場合に生じる蛋白質発現や糖脂質合成における変化を観察する。
MDP1やHrpAなど潜在期抗原に対するT細胞応答やIgA応答については、より広く、異なる母集団で検討すること、また反応者と病態の相関を解析していく必要がある。潜在性結核の診断やワクチン抗原としての評価を重ねていく。特に防御的Th1細胞応答での転写因子の発現レベルを観察する。IgA応答については、分泌型IgAの産生が生じているかを観察し、それが疾患の沈静化マーカーであるかについて検討を加える。
MDP1の発現部位に産生される宿主分子の結核の潜在化に関わる機構について論文を作成し、英文雑誌に投稿する。個体(マウス)レベルでも、結核感受性に関わるかについての解析を行う。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 6件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Whole-Genome Sequence of Mycobacterium kyorinense.2014

    • 著者名/発表者名
      Ohtsuka, K., Ohnishi, H., Nozaki, E., Pais Ramos, J., Tortoli, E., Yonetani, S., Matsushima, S., Tateishi, Y., Matsumoto, S. and Watanabe, T.
    • 雑誌名

      Genome Announc.

      巻: 2 ページ: e01062-01014

    • DOI

      10.1128/genomeA.01062-14.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 結核菌組換えタンパク質MDP1 およびCpG-DNA であるG9.1 を用いた結核ブースターワクチンの開発2015

    • 著者名/発表者名
      前山 順一,山崎 利雄,山本 十糸子,林 大介,松本 壮吉
    • 学会等名
      第88回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      岐阜市
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-28
    • 招待講演
  • [学会発表] 効果的なワクチン開発のための結核特異抗原に対する液性免疫の解析2015

    • 著者名/発表者名
      星野 仁彦、仁木満美子、仁木  誠、金子 幸弘、吉山  崇、森本 耕三、倉島 篤行、後藤  元、工藤 翔二、永井 英明、松本 壮吉
    • 学会等名
      第90回結核病学会
    • 発表場所
      長崎市
    • 年月日
      2015-03-18 – 2015-03-18
    • 招待講演
  • [学会発表] TLR9リガンドであるG9.1をアジュバントとして用いた結核ブースターワクチンの開発2014

    • 著者名/発表者名
      前山 順一、山崎 利雄、山本 十糸子、林 大介、尾関 百合子、松本 壮吉、伊保 澄子、山本 三郎
    • 学会等名
      日本ワクチン学会学術集会
    • 発表場所
      福岡市
    • 年月日
      2014-12-06 – 2014-12-07
    • 招待講演
  • [学会発表] 成人の肺結核予防を目指した、新しい結核ワクチンの開発研究2014

    • 著者名/発表者名
      尾関 百合子、松本 壮吉
    • 学会等名
      中部乳酸菌研究会発表会
    • 発表場所
      長野市
    • 年月日
      2014-11-24 – 2014-11-24
    • 招待講演
  • [学会発表] 結核菌の増殖抑制や潜在結核菌の解析および、結核ワクチンの開発研究2014

    • 著者名/発表者名
      松本 壮吉
    • 学会等名
      第22回呼吸器疾患・感染症研究会
    • 発表場所
      東京都千代田区
    • 年月日
      2014-08-23 – 2014-08-23
    • 招待講演
  • [学会発表] Mycobacterial DNA-binding protein 1 induces phenotypic tolerance to isoniazid in mycobacteria2014

    • 著者名/発表者名
      Makoto Niki, Mamiko Niki, Mayuko Osada-Oka, Yuriko Ozeki, Sohkichi Matsumoto.
    • 学会等名
      International Union of Microbiological Societies Congresses
    • 発表場所
      Montreal Canada
    • 年月日
      2014-07-27 – 2014-08-01
    • 招待講演
  • [備考] 新潟大学医学部医学科概要

    • URL

      http://www.med.niigata-u.ac.jp/contents/research/kiso/saikin.html

  • [備考] 新潟大学医学部細菌学

    • URL

      http://www.med.niigata-u.ac.jp/contents/research/kiso/saikin.html

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公開日: 2016-06-01  

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