研究課題/領域番号 |
24390110
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高田 礼人 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 教授 (10292062)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス / ヘマグルチニン / 抗体 / 亜型間交差 / 感染性中和 / 感染防御 |
研究概要 |
インフルエンザAウイルスはウイルス表面糖蛋白質であるヘマグルチニン(HA)およびノイラミダーゼ(NA)の抗原性によって複数の亜型に分けられる。ウイルス中和抗体の標的は主にHAであり、通常の中和試験において抗ウイルス血清は亜型間で交差反応性を示さないことから、亜型間交差感染防御免疫における抗体の役割に関する知見は限られていた。しかし、これまでに申請者らは亜型間交差反応性のHA特異的モノクローナル抗体の作出に成功した。本研究では、これらのモノクローナル抗体を用いて、HA亜型間共通エピトープを探索し、亜型間交差感染防御免疫における抗体の関与を明らかにする。また、亜型間交差反応性モノクローナル抗体とHAの結合構造を詳細に解析し、HA分子と相互作用する抗体分子上のアミノ酸を改変することによって、抗体の亜型間交差反応性を操作する技術の確立を試みる。 これまでに、H1、H2、H3およびH13亜型のウイルスに対して亜型間交差中和活1生を示すモノクローナル抗体(S139/1)の作出に成功した。S139/1とHAの共結晶構造のX線解析によって、この抗体はHAのglobular head領域のHAのレセプター結合近傍のアミノ酸を広く覆い、HCDR2がレセプター結合ポケットの中に深く入り込む結合様式であることが分かった。また、不活化ウイルスでマウスを免疫すると、通常の中和活性は持たないが複数の異なる亜型のウイルスに対する抗体が誘導されることを明らかにした。本研究は、亜型間交差感染防御免疫における抗体の役割を実証し、交差反応性抗体を用いたインフルエンザに対する抗体療法の可能性を示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、亜型間交差反応性モノクローナル抗体とHAの結合構造を詳細に解析した結果、今後の計画に進むための情報を獲得できたから。
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今後の研究の推進方策 |
X線構造解析によって明らかになった結合様式を鋳型に、抗体の部分合成ペプチドによるウイルス感染阻害効果、抗体の遺伝子改変のための分子間相互作用シミュレーション等を行う予定である。また、通常の中和活性は持たないが複数の異なる亜型のウイルスに対する抗体について、感染防御免疫における役割について明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
X線構造解析がスムーズに進んだため、抗体を含む蛋白質精製に必要な費用が予想よりも少額で済んだため、繰り越しが生じた。次年度の研究費と合わせて、合成ペプチドによるウイルス阻害活性等をより広くスクリーニングすることが可能になった。研究費は、主に消耗品と旅費に使用する予定。
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