研究課題
インフルエンザAウイルスはウイルス表面糖蛋白質であるヘマグルチニン(HA)およびノイラミダーゼ(NA)の抗原性によって複数の亜型に分けられる。ウイルス中和抗体の標的は主にHAであり、通常の中和試験において抗ウイルス血清は亜型間で交差反応性を示さないことから、亜型間交差感染防御免疫における抗体の役割に関する知見は限られていた。本研究は、亜型間交差感染防御免疫における抗体の関与を明らかにすることならびに抗体の特異性を改変する技術の開発を目的とした。H28年度は、亜型間交差反応性モノクローナル抗体(S139/1)とHAの結合構造を詳細に解析し、HA分子と相互作用する抗体分子上のアミノ酸を改変することによって、抗体の亜型間交差反応性を操作する技術の確立を試みた。S139/1とHAの共結晶構造を基に、計算科学的手法によって、抗体とHAとの間の分子間相互作用を解析し、抗体とHAの結合力に重要であるアミノ酸残基を複数見出した。それらのアミノ酸を他のアミノ酸に置換した場合の抗体の結合力を、分子間相互作用シミュレーションによって解析し、それらのアミノ酸を実際に置換した組換え抗体を作出し、酵素抗体法による結合力の評価および感染性ウイルスを用いた中和試験を行った。本研究では、亜型間交差感染防御免疫における抗体の役割を実証した。特に同じエピトープを認識するモノクローナルIgGおよびIgA抗体の比較によるIgAの優位性の実証に至った。さらに、交差反応性抗体を用いたインフルエンザに対する抗体療法の可能性を探った。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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MBio
巻: 8 ページ: e02298-16
10.1128/mBio.02298-16
Nat. Immunol.
巻: 17 ページ: 687-694
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