研究課題/領域番号 |
24390113
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松浦 善治 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (50157252)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | HCV / 宿主側因子 / 複製 / 粒子産生 |
研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)の生活環は徐々に解明されつつあるが、粒子産生機構については未だ不明な点が多い。これまでに我々は、肝臓以外のヒト細胞株に肝臓特異的なマイクロRNAである miR-122を発現させることで、肝臓由来細胞株と同等にHCVが複製することを報告している。しかしながら、非肝臓系細胞株では感染性粒子を産生しなかった。これまでに肝臓から分泌されるVLDLの産生に関与するアポリポ蛋白質(ApoBやApoE)がHCVの粒子産生に重要な役割を果たしていることが報告されている。今回、高分化型肝細胞癌のマーカーであるAFPを指標にして、miR-122やアポリポ蛋白質等の肝臓特異的な因子を発現する細胞株を選択し、HCVの増殖性を評価した。その結果、新たに肝細胞由来のJHH4細胞と胃癌由来のFU97細胞がHCVの感染性粒子を産生できることが示された。また、人工ヌクレアーゼを用いてヒト肝臓由来細胞株からApoE遺伝子を欠損させても、粒子産生に変化は認められなかった。さらに、この細胞からApoBをノックダウンさせると粒子産生が顕著に低下した。以上の成績から、ApoBとApoEは協調的に作用してHCVの粒子産生に関与していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝臓以外のヒト細胞株でもHCVゲノムは複製可能であるが、感染性粒子の産生には肝臓特異的な宿主側因子が必要であることが明らかとなった。そこで、人工ヌクレアーゼを用いて粒子産生に必須な宿主因子の洗い出しに着手した。HCVの実験室株が確立され、HCVの生活環の解析が進展したが、この系で得られた各種薬剤感受性は臨床での効果とかなりの乖離が指摘されている。本研究で開発された、新しいHCV感受性細胞株を用いて、これまでHuh7細胞だけで解析されてきたHCVの増殖機構の検証が可能となり、HCVの宿主細胞との相互作用のより深い理解が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
miR-122を各種ヒト培養細胞株に強制発現してHCVの感受性を検討した結果、HCVの完全な増殖を許容する新規細胞株、肝細胞由来のJHH4細胞と胃癌由来のFU97細胞を同定した。また、HCVの粒子産生には、ApoEの機能をApoBが代償することが明らかとなった。今後は人工ヌクレアーゼを用いて、ApoBおよびApoEのダブルノックアウト細胞株を樹立して、より詳細な解析を行っていく予定である。
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