研究課題
HCV遺伝子をスイッチング発現できるトランスジェニックマウス(HCV Tgマウス)を樹立し、このマウスが持続的なHCV蛋白発現と免疫応答・慢性肝炎発症を起こし、肝硬変・肝がんを発症することを明らかにした。更にHCV遺伝子組換えvaccinia virus(rVV)株を樹立し、非構造領域を挿入したrVV-N25が治療ワクチンとしての有効性を検証した。HCVTgマウス肝細胞にHCV蛋白を発現させ経時的に、病態の解析を行った。次にHCVの構造蛋白質発現組換えワクシニアウイルスrVV-CN2、非構造蛋白質発現rVV-N25、全蛋白質発現rVV-CN5を慢性肝炎発症Tgマウスに投与した。肝細胞にHCV蛋白が発現後、約2年にわたりリンパ球の浸潤像、steatosisなどの慢性肝炎の所見を肝組織でみとめ、600日後では有意に肝細胞癌が発症していた。rVV-N25接種群では接種後1週で肝臓の索状構造やsteatosisなどの正常化が認められた。HCV蛋白質の排除にはCD4,CD8細胞が重要であった。さらにN25接種群では、他群と比較し血清IFNg, TNFa, IL-12, IL-6などの炎症性サイトカインが抑制されていた。Lipo-clodronate投与後にHCV Tg miceの肝脂肪化、索状構造の異常構造など肝組織像が改善しておりmacrophageが肝障害に関与していることが示唆された。HCV Tg miceの肝臓内のmacrophageはM2優位であり、TNFaやIL-6が主にM2 macrophageから産生されていた。これらの結果はM2Macにより産生された炎症性サイトカインがHCV-TgマウスにおいてC型慢性肝炎の誘導に寄与することを示唆している。さらにrVV-N25は肝臓内炎症性M2 Mac数を減少させる事で肝臓の正常化に寄与することが示された。
2: おおむね順調に進展している
組換えワクシニアウイルスワクチンが良好な治療効果を示すが、HCVは樹状細胞下流の活性化を阻害してもいることを明らかとした。この阻害過程を明らかにすることによって、治療ワクチンの効果のさらなる向上をめざす。
免疫抑制因子の発現が上昇しており、免疫抑制シグナル経路によって炎症反応が抑制され、免疫寛容状態となっている可能性が考えられる。rVV-N25は、炎症性サイトカイン産生M2 Macを減少させることで肝臓の病態を改善し、治療ワクチンとしての効果を発揮することが明らかとなった。今後治療ワクチンの安全性を高めるために、rVV-N25のNS3プロテアーゼ、ヘリケース活性部位およびNS5BのRNA依存性RNAポリメラーゼ活性領域に変異を入れたワクチンを作製する。
慢性肝炎発症HCV-TgマウスにHCV-rVVを接種したところ肝臓中の炎症性サイトカイン発現マクロファージの現象が見られた。この減少機序及び肝炎病態発症における炎症細胞のSubsetと役割を明らかにするためのFACS解析などを効率よく行うことができたために未使用額が発生した。
本研究の成果をヨーロッパ肝臓学会で発表及び討議する経費として使用する。
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