職域における従業員のメンタルヘルス対策事業は、事前に合理的な根拠に基づいて内容を決定し、事業終了後には適切に評価される必要がある。全ての事業には立場の異なる複数の利害関係者(stakeholder)が存在し、事業の評価指標は単一ではなく複数あり(multi-attribute)、目的を達成するための方法(事業)は複数存する。そこで、本研究では、研究期間中に、これらの視点を踏まえた事業評価手法であるMAUT(Multi-attribute Utility Technology)を用いて、複数のホワイトカラーの職域を対象に、そこで行われているメンタルヘルス対策事業の決定の妥当性の検証を行う。次に、事前にMAUTにより事業内容の合理性を担保された対策とそうでない対策を、事業終了後に再度、MAUTを用いて評価し、結果の比較や感度分析により、MAUTによる事業内容の評価の妥当性の検証を行う。 本年度の活動であるが、ヘルスプロモーションの領域のプログラムにMAUTを適用して事業評価を行った例は殆ど見られない。従って、プログラムをめぐる利害関係者の特定の基準(特に範囲)や、メンタルヘルス対策の評価指標の設定の方法(特に指標の範囲)についてはやや不明な点が見られる。そこで、本年度は、文献レビューを行い、他分野におけるMAUTの適用事例を集め、これらの事例の検討を踏まえ、上記の点に関する基準を作った。更に、ここで策定した基準を基に、MAUTに関する調査項目を確定のうえ調査票(「MAUTによる事業評価に関する調査'票」)を作成した。 更に、次年度からの調査に備え、複数の職域での従業員のメンタルヘルス対策について、事業所側と連携し、以下の事項を確定した。(1)当該事業所において今後、行う予定の複数のメンタルヘルスプログラムの設定(3件程度)、(2)それらプログラムを巡る複数の利害関係者の特定、および、(3)メンタルヘルス対策に関する複数の評価指標の設定。
|