研究成果から生じる知的財産については,現実には技術移転の難しさなども伴って十分に活用することが難しい状況にある.その原因として,特許などの既存の評価指標は定量化が困難で主観に依存する傾向があること,医療に限定されない汎用的な評価指標であるため治験・薬事申請などを必要とする医療機器には適していないことなどが考えられる.本研究では,医療機器に特化した知的財産の定量的な評価指標を確立したうえで,その有用性を評価し,かつ妥当性を検証することを目的とした.この目的を達成するため,これまでに医療機器の開発に際して生じる特許など知的財産に関する定量的な評価指標を開発した.この評価指標は,特許など権利化の可能性,特許が実施されて活用されるための事業性,および医療機器としての社会的な価値を示す社会性の3つを主たる項目として全18項目を定めた. 平成26年度には,国内の大学・国立高度専門医療研究センターなどに所属する者が発明者となりアカデミアが出願人(企業を含まない)となっている公開特許情報を対象として,医療機器に関する出願をランダムに26件抽出し,当該指標に基づいて評価・解析した.権利化の可能性における新規性,事業性における製品化に至るまでのプロセス上の現在段階,社会性における機器の有用性などの項目は出願案件ごとのバラツキが大きく特徴が現れ易い一方で,事業性における市場性,社会性におけるオーファン性や環境への配慮などの項目は出願案件ごとの差異が認められ難い傾向が示唆された.
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