研究課題
基盤研究(B)
1)Aβ毒性発現機序の検討Aβ42の22-23位のアミノ酸残基にターン構造を有するコンホマー(毒性コンホマー)が、高い凝集能を有し、またPC12細胞に対して強力な細胞毒性を発現することが報告されたため、毒性コンホマーがアルツハイマー病の病態形成に重要な役割を担うことが推定される。しかしこれまで、毒性コンホマーのニューロンに対する毒性ならびにその作用機序については不明であった。Aβ42毒性コンホマーの性質を明らかにする目的で、22位のグルタミン酸残基をプロリン残基に置換することによりターン構造をとりやすくした変異体であるE22P-Aβ42を合成し、Wt-Aβ42との比較検討を行った。E22P-Aβ42は濃度依存的かつ時間依存的に神経毒性を誘発し、その作用はWt-Aβ42と比較して顕著に強いものであった。以上の結果より、Aβ42誘発神経毒性には毒性コンホマーの形成が重要であることが示される。2)ニコチン性アセチルコリンの神経保護メカニズムの解析グリア細胞のニコチン受容体シグナルの解析を行う目的で、培養アストロサイト・ミクログリアにおけるニコチン受容体に発現変化ならびに受容体機能の指標として細胞内へのカルシウム流入について検討を行った。培養アストロサイトならびに培養ミクログリアにはα7ニコチン受容体の発現がmRNAおよびタンパク質レベルで観察された。さらにアストロサイトにおけるα7ニコチン受容体の機能について細胞内カルシウム濃度変化について検討したところ、ニコチン投与により細胞内カルシウム濃度上昇が観察された。しかし、アストロサイトにおける細胞内カルシウム濃度上昇の程度は小さく、かつゆっくりとしたものであり、ニューロンで観察されるものとは異なっていた。アストロサイトにおけるニコチン受容体の長期刺激によるアップレギュレーションについて検討を行ったところ、アストロサイトにおいてはニコチンにより4日間処置してもアップレギュレーションは引き起こされなかった。
3: やや遅れている
セロフェンド酸の神経保護作用機序の解明においては、Aβ毒性発現機序への抑制作用を検討する予定であったが、毒性発現機序の解析に時間がかかったため、現状では研究が進められていない。しかし、ニコチン性アセチルコリンの保護メカニズムに関して、グリア細胞での検討は予定通り進められた。本年度の遅れを来年度以降取り戻すように更なる検討を進める。
上述のとおり、少し研究計画よりも進行が遅れているのでより効率的に研究を進め、次年度中には予定通り進める予定である。特に、セロフェンド酸の定量法の確立ならびに結合タンパク質の同定には注力し、研究を遂行する予定である。さらに、神経突起伸長作用を有する化合物について検討をすすめる。
セロフェンド酸の神経保護作用機序の解明に向けた研究において予定通りに進められなかったため、基金分において未使用額が生じた。未使用額については次年度において本検討を進める際の消耗品として主に使用する。さらに次年度に計画中のセロフェンド酸の定量法を確立する際に使用する予定である。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (10件)
J Pharmacol Sci.
巻: 119 ページ: 30-39
10.1254/jphs.12047FP
Free Radic Biol Med.
巻: 53 ページ: 669-679
10.1016/j.freeradbiomed.2012.06.021
Biochem Biophys Res Commun.
巻: 426 ページ: 94-99
10.1016/j.bbrc.2012.08.042
J Neurosci.
巻: 32 ページ: 12543-12557
10.1523/JNEUROSC1.5803-11.2012
巻: 120 ページ: 105-111
10.1254/jphs.12143FP
ACS Chem Neurosci.
巻: 3 ページ: 674-681
10.1021/cn300033k