研究課題
1)ラット左冠動脈一過性閉塞モデルにおいて、セロフェンド酸を虚血前と再灌流前の2回静脈内投与したところ、梗塞巣体積を著明に減少した。そこでセロフェンド酸とジアゾキシドの心筋虚血-再灌流障害に対する保護作用を比較したところ、その保護作用は同程度であり、両薬物の心筋保護作用は5-HDの投与により完全に消失した。また、セロフェンド酸は虚血-再灌流によるTMREの蛍光強度の減少を抑制した。以上の結果からセロフェンド酸はin vivoにおいて虚血性心筋障害に対して保護作用を発現すること、更にその保護作用メカニズムとしてmitoKATPチャネルの開口を介して虚血-再灌流により惹起されるミトコンドリア膜電位の低下を抑制することが重要であることが示唆された。2)ニコチン受容体の脳防御機構における役割を解明するために、ラット培養大脳皮質ニューロンを用いてGSK-3βを介した神経細胞死機序に関する検討を行った。GSK-3βによるリン酸化が神経細胞死への関与が示唆されているTauのリン酸化について注目した。PP2A阻害薬であるオカダ酸の投与によって大脳皮質ニューロンにおいてTauのリン酸化が亢進した。また、オカダ酸投与により神経細胞死が誘発された。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジルはオカダ酸により誘発される神経細胞死を抑制した。以上の結果より、ドネペジルはTauのリン酸化を制御することでオカダ酸誘発神経細胞死を抑制する可能性が示された。
3: やや遅れている
本年度はTauのリン酸化の制御機構と神経細胞死の関連に関する検討を進める予定であった。実際にはドネペジルによる神経保護作用は明らかにしたが、Tauのリン酸化との関連については明らかに出来なかった。抗体による検出の至適条件検討に時間がかかり、本年度中の解析が間に合わなった。今後、抗体によるリン酸化部位の選別により、そのリン酸化機構と神経細胞死の関連について検討を進める予定である。
上述のとおり、研究計画より少し研究の進行が遅れているため、より効率よく研究を進め、神経細胞死におけるTauのリン酸化の関与について検討を進める予定である。
セロフェンド酸の定量法の確立と結合タンパク質の同定の実験において遅れが生じており、それを用いた動物実験などが進んでおらず、基金分において未使用額が生じた。
未使用額については、次年度における動物購入費、消耗品として主に使用し、実験計画の遅れを取り戻すべく、検討を進める。
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