研究課題
従来、川本らの開発による G6PD Assay Kit-WST (Dojindo)が流行地で実施可能な方法として使用されてきた。しかし血液のヘモグロビンの色とWSTの発色が似通っている事から、肉眼観察による陰性の判定には誤診のリスクが存在した。また女性heterozygoteにおける中間値判定も問題となった。今回、上記キットに対して簡易型光電比色計とドライバスを用いて、反応の開始時と終了時の2回吸光度を測定して、酵素反応量をWSTの吸光度変化量として表す事で、1) 確実な反応陰性者判定、2) 15 分で の迅速判定、3) 50%付近の活性値判定を可能とする改良を行った。男性の測定結果では、全測定値を集めると吸光度差 0.78 付近でピークとなり、これを正常人のピークと見なした。この活性値の 20% 以下の所に二つ目のピークが有り、この集団が欠損症(homozygote)と考えられる。従って、陰性の基準は吸光度差 0.156 以下とした。女性においては男性のごとき2つのピークはみられなかった。今回は男性と同じ基準を当てはめ、0.156以下を暫定的に欠損症とした(homozygote)。総計男性1518名を調べ、欠損者は189名(11.9%)であった。欠損症率はKibuogiおよびTakauwiri島および内陸部Ungoyeで各々約15%と高く、Ngodhe島では4%と低かった。Mfangano島では11%であった。女性総計1637名を調べ、欠損者は29名(1.8%)であった。現在解析中の男性Hemizygoteの遺伝子変異とともに(平山)、女性HeterozygoteのOD値の分布について、今後遺伝子変異を明らかにした上で検討したい。これらの結果は熱帯熱マラリア抗生殖母体薬としてのプリマキンを含む集団治療による島嶼マラリア伝播阻止計画の基盤となる。
2: おおむね順調に進展している
主たる理由は現地協力機関の全面的な研究支援体制にある。ケニアにおける保健省カウンターパートのDr Willis Akwaleは2000年から3年間、学位研究のため金子の指導のもと日本に滞在した。
集団治療実施準備: ビクトリア湖オコデ島全住民(700人)を対象にアルテミシニンとプリマキンによる集団治療をおよび薬剤処理蚊帳配布によりマラリア撲滅が達成できるかをみるfeasibility study実施に向けてケニア側研究者と実施計画について協議を進めている。特にMDA実施についてのethical clearanceを得るために慎重に準備を進めている。中国側Prof LiからのMDA実施に際しての技術的な支援を得るために協議を重ねていく。住民組織の確立:オコデ島での集団治療実施、およびcommunity-directed surveillance確立に必要な住民組織の確立を目指す。住民側と綿密な話し合いを持つ。疫学調査継続:撲滅実施に先立つ オコデを含む地理的に連なる島嶼および内陸湖岸村住民集団においてマラリア感染に関する寄生虫学、血清学、分子疫学的調査を島嶼地域間比較において継続していく。また熱帯熱マラリア培養株確立を調査と並行して進める(木村、金子修)。Pf生殖母体分布について検討するための濾紙RNA採血を試み分子マーカーによる検討を開始する。実験室解析:これまでに実施した疫学調査から得た濾紙採血サンプルについて、熱帯熱マラリア原虫薬剤耐性遺伝子、マイクロサテライト解析による原虫集団の動態、G6PD欠損症の遺伝子型、原虫抗原多型変動解析の検討を進める。これら多角的な実験室解析は同一サンプルに対して行われるため、金子がcordinatorとしてsubgroup間の調整を図り、班会議およびwebsiteにおいて得られるデータの・連携・統合を図っていく。血清疫学的検討をLSHTNのChris Drakeleyと共同でカロリンスカ研究所で着手する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
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