研究課題
基盤研究(B)
本研究の目的は、マイクロ流体システムを用いて、臨床検体中のウイルス粒子を網羅的に濃縮・精製し、新規人工核酸プローブによるウイルスゲノムの高感度検出までを一体化した、30分以内に診断可能な、「携帯型オンチップ検出装置」を開発し、臨床検体を用いた評価試験を行うことである。呼吸器病原ウイルスを標的とし、1ウイルス当たり数千コピーを検出限界とするオンチップデバイスを作製し、ベッドサイドおよび国内外の検査機関における実用化に向けた技術基盤を構築する。加えて、インフルエンザウイルス薬剤耐性株を特異的に検出するチップデバイスを開発する。平成24年度はオンチップデバイスを用いてウイルス粒子を補足するための予備的な検討を行った。その結果、ウイルス粒子の数倍の濃縮に成功したが、さらに精度を上げていく必要があると考えている。ペプチド核酸(PNA)を用いてインフルエンザウイルス(ゲノム)の検出についても一定の成果を上げることができた。また、デバイスの精度確認ならびに臨床検体を想定した複数ウイルスの共存在をシミュレートするために、試料中のウイルスゲノムを網羅的に定性・定量解析する必要があった。そのために、次世代シーケンサーであるIon personal genome Machine (PGM)システムのテンプレート調製自動化システム(Ion One Tuoch 2.0 Duoシステム)を京都府立医科大学に導入してテンプレート調製を行い、共同研究機関においてジーケンシングとデータ解析を行う体制を整えた。今後は、デバイスへの固定技術の確立や抗NP抗体(PNAで補足したインフルエンザウイルスゲノムを高感度で検出するために使用)に代わるPNA(ランダムヘキサマーなど)を用いた補足プローブの開発を計画している。
2: おおむね順調に進展している
オンチップデバイスの開発およびペプチド核酸のウイルス(ゲノム)検出システムの開発が当初の計画通りに進展しているため。
平成24年度に得られた成果をさらに発展させるとともに、分離・濃縮を行ったウイルス粒子に対し、PNAをプローブとして検出するためのシステム開発を行う。
(1)三重鎖形成型PNA(BisPNA)のデバイスへの固定技術を確立し、捕捉プローブとする。(2)ウイルスゲノムを可視化するための検出プローブとして、金コロイドに結合したランダムヘキサマーPNAを第一候補とする。ことを実施する計画である。また、今年度の直接経費は次年度の経費と合わせて、次世代シーケンサー(IonPGM)の購入に充てる計画である。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件)
PLoS Pathog.
巻: 9(2) ページ: e1003150
10.1371/journal.ppat.1003150
Int. J. Clin. Exp. Pathol.
巻: 5(8) ページ: 787-795
J. Gen. Virol.
巻: 93 ページ: 2215-2226
10.1099/vir.0.044032-0