研究課題/領域番号 |
24390150
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
八坂 敏一 佐賀大学, 医学部, 助教 (20568365)
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研究分担者 |
原 博満 佐賀大学, 医学部, 准教授 (20392079)
村田 祐造 佐賀大学, 医学部, 准教授 (20128143)
池田 弘 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80377473)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 疼痛学 / 神経免疫連関 / 脳内炎症 / 免疫学 / 生理学 |
研究概要 |
神経障害性痛発症メカニズムにおける脊髄グリア細胞の役割が近年急速に明らかとなってきている。新規な自然免疫活性化機構に関わる受容体であるITAM受容体がグリア細胞に発現して、損傷自己細胞からのシグナル(デンジャーシグナル)を認識とすると、新たな神経障害性痛発症メカニズムとなるかもしれない。しかし、これらの受容体の神経障害痛発症メカニズムにおける役割は分かっていない。本研究ではこの仮説を検証すべく、これらの受容体の神経障害痛発症メカニズムにおける役割を明らかにする。 昨年度までに、様々なITAM受容体ノックアウトマウスを用いて神経障害性痛モデルを作製し疼痛関連行動を評価してきた。また、異常が見られた系統に関して、免疫組織化学染色などによりグリア細胞の活性化等を調べている。 本年度は、免疫組織化学染色により得られたデータの定量化を進めてきた。また、リアルタイムPCRマシンを購入し、遺伝子発現を調べている。野生型マウスとITAM受容体KOマウスを用い、神経損傷前後での比較を行っている。これまでに神経損傷による発現変化が報告されている遺伝子について、ノックアウトによる影響がないか調べている。これまでにいくつかの遺伝子で野生型と異なった結果を得ている。これらの結果はITAM受容体シグナル下流でどのような遺伝子が動き、さらにそれが疼痛へつながるかを知るために重要である。これらのITAM受容体を発現する細胞を同定することは重要であるが、免疫組織化学法に適した抗体の入手が困難なため、まだ、同定にいたっていない。しかし、ITAM受容体のひとつに関しては、GFPノックインマウスを用いて発現細胞の同定を行った。また、リアルタイムPCRでmRNA発現が神経損傷後に増加することが分かった。その他、リガンドの検索をGFPレポーター細胞を用いて引き続き行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに、様々なITAM受容体ノックアウトマウスに神経障害性痛モデルを適用した。多くの場合、ノックアウトによる表現型が得られた。現象としてはITAM受容体の神経障害性痛発症メカニズムへの関与が示唆されている。この点については、おおむね順調である。 これまでにグリア細胞の染色などを行い、メカニズムの解明を行っているが、免疫組織化学法に使用可能なITAM受容体の抗体が入手困難なことや代替手段であるin situハイブリダイゼーション法が手技的に難易度が高いため、残念ながらITAM受容体発現細胞同定するにいたっていない。この点に関しては、やや遅れていると考えられる。しかし、GFPノックインマウスが作成された系統については細胞の同定を行った。そういった意味では系統により達成度の違いが見られ、この系統に関してはおおむね順調である。 昨年度リアルタイムPCRマシンを購入し、遺伝子発現の解析をスタートさせている。これによりITAM受容体下流にどのようなシグナルが動き結果として表現型として疼痛行動の変化を起しているか解析可能となった。この点に関してはおおむね順調である。 リガンドの検索は未だに陽性反応が得られておらず、やや遅れている。これまではリガンドの存在部位を絞ってレポーター細胞を刺激してきたが、今後は他の臓器なども含めて、より広い成分で刺激を行うようにする。 イメージング法とパッチクランプ法を今後行う。
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今後の研究の推進方策 |
神経障害性痛モデルの脊髄後角内グリア細胞の動態を免疫組織化学法で調べているが、より詳細に細胞の定量と蛋白の定量を行う。行動実験やグリアの染色の結果がどのように脊髄後角の神経細胞に影響するのかを調べるため、脊髄後角の神経回路活動状態に及ぼす影響を電位感受性色素を用いたイメージング方法で調べる。 ITAM受容体発現細胞を同定するため、免疫組織化学法かin situハイブリダイゼーション法で解析を行う。上述のように現在のところ免疫組織化学法に使用できる抗体が入手困難であるため、in situハイブリダイゼーションを行いたい。 ITAM受容体の活性化をGFPの発現として検出することが出来るレポーター細胞を用いて内因性リガンドの検索を行う。この細胞を用いて脊髄神経切断後の神経組織や、その他培養グリア細胞などを破砕したライセートで刺激し、GFPの発現を調べる。反応が検出された場合は、分画しリガンド候補を絞り込み、レポーター細胞で繰り返し反応を調べながら最終的に同定する。 ITAM受容体シグナルによって遺伝子発現が変化する分子の検索を継続して行う。これまでに報告がある神経障害痛に関連している分子に関してはmRNA発現をリアルタイムPCRで調べる。 パッチクランプ法による神経活動の解析を行う。イメージング法による結果に基づき、影響が考えられる部位を集中的に記録する。脊髄スライス標本やインビボでも脊髄からの記録を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が1,834円生じた。26年度の予算が交付されるまでの期間、小額な消耗品などを購入するために繰越とした。 26年度の本来の予算は計画通りに使用する。繰り越した次年度使用額は、26年度予算がしようできるまでの消耗品の購入などのために使用する。
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