研究実績の概要 |
本研究では出生コホート北海道スタディの7歳児を対象に、アトピー性皮膚炎の環境要因として自宅のダニアレルゲンや合成化学物質曝露、遺伝的要素としてフィラグリン遺伝子の変異、さらに遺伝的素因と環境曝露との複合要因について明らかにすることを目的とした。 平成26年度は、7歳に達した対象者1490名にアレルギーに関する調査票を発送し、921名より回収した(61.8%)。さらに、環境調査に協力が得られた454名に自宅ダスト採取キットを配布し、350名から回収し(77.1%)、280検体のハウスダスト中ダニアレルゲンを分析した。 1064名のFLG変異8ヵ所(3321delA, S1695X, Q1701X, S2554X, c.8640delG, S2889X, S3296X, K4022X)のシークエンス解析を行った結果、いずれかにFLG変異がある児は99名(9.3%)だった。ISAAC調査票より評価したアトピー性皮膚炎の有病割合は21.4%であった。FLG変異があることがアトピー性皮膚炎のリスクを1.3(95%CI:0.71-2.27)倍上昇させる傾向を示したが、統計学的有意差は認められなかった(性別、母親のアトピー性皮膚炎既往歴、ダニアレルゲンで調整)。ハウスダスト中のフタル酸エステル類・リン酸トリエステル類、ダニアレルゲンを測定した532人についてFLG変異の有無における環境要因とアトピー性皮膚炎との関連を解析した。この結果、FLG変異がある児でTPhP濃度が1単位(自然対数)上昇するとアトピー性皮膚炎リスクは2.89(1.10,7.58)倍になった(性別、母親のアトピー性皮膚炎既往歴で調整)。また、FLG変異のない児でDINP濃度が1単位(自然対数)上昇すると、アトピー性皮膚炎リスクは1.30(1.02,1.67)倍になった。FLG変異の有無とダニアレルゲン、アトピー性皮膚炎有病とに関連はなかった。
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