研究課題/領域番号 |
24390153
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
平工 雄介 三重大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (30324510)
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研究分担者 |
大前 和幸 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (60118924)
田中 昭代 九州大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (10136484)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 繊維・粒子状物質 / マイクロRNA / 石綿 / シリカ / カーボンナノチューブ / インジウム / 分子疫学 / リスク評価 |
研究概要 |
繊維・粒子状物質の吸入曝露により呼吸器で慢性炎症が惹起され、発がんや線維化などの健康障害を起こす可能性が懸念される。しかしその分子機構には不明な点が多く、リスク評価法は未だ確立されていない。マイクロRNA(miRNA)とは22塩基前後の短いRNAであり、メッセンジャーRNAに結合して標的遺伝子の発現を抑制し、様々な疾病のバイオマーカーとして近年注目を集めている。 本年度の主な研究成果は以下の通りである。1)石綿を気管内投与したマウスの肺組織よりRNAを抽出し、マイクロアレイでmiRNAの発現を網羅的に解析した。その結果、統計学的有意差を有しかつ対照群に比して2倍以上発現量が変動するmiRNAが、クリソタイルでは26種類、クロシドライトでは5種類同定された。2)黄砂を気管内投与したマウスの肺組織のmiRNA発現を同様に解析した結果、有意に発現量が変動するmiRNAが21種類同定された。二酸化珪素(シリカ)を同様に投与した場合では22種類のmiRNAの発現量が増加した。3)ナノ素材の多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は、ヒトマクロファージ培養細胞で特定のmiRNAの発現量を変動させ、アポトーシスの誘導に関わる可能性を示した。4)MWCNTはエンドサイトーシスによりヒト肺上皮由来培養細胞に取り込まれ、炎症条件下で生じるDNA損傷塩基8-ニトログアニンを生成することを明らかにした(Toxicol ALppl Pharmacol2012)。さらに、繊維長の長いMWCNTは短いものより強い細胞毒性とDNA損傷性を示すことを明らかにしている(論文作成中)。5)インジウム曝露者の血清miRNAを指標とした健康障害のリスク評価に関する分子疫学研究については、今年度に三重大学医学部の倫理審査委員会で研究計画が承認された。現在は血清標本の収集に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロアレイを用いた網羅的解析により、繊維・粒子状物質の曝露を受けた実験動物の肺組織および培養細胞において、多くのmiRNA発現量が変動することを明らかにした。また分子疫学研究については、所属機関の倫理審査委員会の承認を得たため、インジウム曝露者の血清の収集に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
実験動物では、繊維・粒子状物質による呼吸器の線維化や発がんに寄与する血iRNAを同定し、分子機構の解明を目指す。分子疫学研究では生体試料の収集を進め、健康障害のリスク評価に資するmiRNAを探索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究分担者(田中)の直接経費の一部が次年度に持ち越されたため、次年度分の研究費と合わせて、実験動物モデルの作成およびmiRNA解析に必要な物品の購入に使用する予定である。
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