研究課題/領域番号 |
24390157
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 昌志 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10281073)
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研究分担者 |
大神 信孝 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80424919)
矢嶋 伊知朗 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80469022)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / 騒音 / 聴覚障害 / 予防療法 |
研究実績の概要 |
【背景・目的】欧州連合の健康リスク評価委員会は若年者を中心としたMP3プレーヤーの爆発的普及により欧州連合域内で250-1,000万人が騒音性難聴により聴覚を失う危険性を警告し、対策を開始した。一方、我が国の対策は遅れている。騒音性難聴の現状把握・機構解析・基準値再評価と整備・予防方法の開発のための基礎研究が必要である。本研究では、①疫学研究によりヒトが曝露されている騒音の現状を把握する、②ヒトが日常生活で曝露されうる騒音が誘発する健康被害の発症機構を、動物を用いた実験医学研究にて解明する、③騒音性難聴を制御する分子を標的とし、内服で騒音性難聴を緩和できる予防療法を動物で開発する、ことをめざす。 【成果】 1)聴覚に関する疫学研究を推進した。国内の研究では、日常的に曝露されている騒音に加えて、尿に含まれる酸化ストレスマーカーや元素濃度との相関関係を解析する疫学研究を推進中である。さらに、内耳血管条等の障害を誘発し、聴覚に関与する可能性もある脂質について疫学研究を進めた。一方、国際共同研究として実施された疫学研究では、聴覚とタバコの相関関係について、多変量で解析した成果を国際科学誌に報告した。 2) 曝露される騒音の周波数および時期により、誘発される疾患および症状が異なる可能性を動物レベルで見出した。また、亜鉛や銅のナノ分子の影響を個体で解析する研究を進めた。 3)遺伝子改変マウスを用いた研究により、騒音性難聴を制御できる可能性を持つ新規分子を見つけた。本分子が、騒音性難聴を抑制する機構について、内耳における有毛細胞・らせん神経節・血管条等に着目し、形態学的および電気生理学的手法を用いて解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験研究では、可聴域の騒音曝露により誘発される難聴の発症を抑制できる可能性を持つ新規分子を見つけ解析を推進している。さらに、本分子をターゲットにした騒音性難聴の分子標的療法の開発について、動物レベルではあるが、見通しが立ちつつある。また、騒音の健康影響について、より精密な基礎データを提供できる可能性がある。疫学研究でも、着実に研究が進行しており、研究全体として、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトを対象とした疫学調査については、単変量および多変量にて解析を推進する。実験研究については、種々の周波数の騒音における健康影響を、マウスにおいて、より精密に評価する研究を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予想とは異なる分子が、騒音制御効果を持つ可能性が出てきた。研究の遂行上、この現象の本質を見極めることが、本研究の遂行上不可欠であったので、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
騒音制御効果を持つ可能性を持つ分子に関する機能解析するために物品費、旅費、人件費・謝金、その他の項目に使用する。
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