研究課題/領域番号 |
24390160
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研究機関 | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
宮木 幸一 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (20327498)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ゲノム疫学 / 産業精神保健 / うつ / ストレス / 気分障害 / メンタルヘルス / エピゲノム / 疫学 |
研究概要 |
本研究は抑うつ発症における職業性ストレスと遺伝素因・エピゲノムの相互作用を明らかにすることにより、疾患発症・進展の早期予防に向けての基盤となるエビデンスを創成することを目的として、職域コホート集団のなかからリクルートを進めてきた。今年度は倫理審査で承認された説明文書によりゲノム・エピゲノム解析の同意を700名以上から得ることができ、全例のDNA抽出とSNP(一塩基多型)およびDNAメチル化解析を行うことができた。特にBDNF遺伝子全域およびCpG I領域において、抑うつ度が高まるとメチル化が有意に減少することが明らかとなり、論文化して国際誌への投稿したところNeuropsychiatric Genetics誌に受理された(in press)。唾液から迅速にDNAメチル化の判定ができれば、うつ病の診断バイオマーカーとして、また治療効果の客観的判定に有用である可能性があるため、今後も他の遺伝子領域で同様の検討を進めながら、我々の職域コホートの豊富な情報を活用し、環境因子(社会経済状況、栄養状況、ストレスに関する諸指標Job strain、demand、control、effort reward imbalance、 work engagementなど)、発達障害傾向や愛着パターンなどとの関連についても考慮しながら、エピゲノムと環境との交互作用を明らかにすべく統計解析を進めており、まとまり次第随時発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は抑うつ発症における職業性ストレスと遺伝素因・エピゲノムの相互作用を明らかにすることにより、疾患発症・進展の早期予防に向けての基盤となるエビデンスを創成することを目的として職域コホート集団のなかからリクルートを進めてきたが、今年度は倫理審査で承認された説明文書によりゲノム・エピゲノム解析の同意を700名以上から得ることができ、DNAの抽出まで終えることができ、SNP(一塩基多型)およびDNAメチル化解析を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度はこれらの情報を整理しつつ得られた結果を基にして、環境因子(社会経済状況、栄養状況、ストレスに関する諸指標Job strain、demand、control、effort reward imbalance、 work engagementなど)、発達障害傾向や愛着パターンなどとの関連について先行研究を参考にしながら統計解析を行う。さらに余裕があれば既知の遺伝子座における解析結果を鑑みながら既報のない遺伝子座についての解析も検討したい。 このようにして得られた結果を取りまとめ学会発表や国際誌への論文投稿を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に協力いただいている職域コホートにおいて研究班事務局に一括送付された調査票の数の不一致が明らかになり、調査したところ輸送中のダンボール破損による郵便事故が疑われ、その後の調査で伝票のはがれ等による行方不明の荷が集積される品川の保管庫で、ダンボールに入った状態の調査票が探し出され、幸い個人情報の流出という最悪の事態には至らず、謝罪文書を提出することで解決をみた。ただしこの郵便事故のために調査に対する風当たりが強くなり、データ収集や実験・解析に遅延が生じたため。 昨年度に完了したイルミナ社のチップによるエピゲノムデータとともに、コホート追跡データを用いて引き続き関連解析を行っていく。
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