研究概要 |
1.原爆被爆者の胃癌症例(腸型症例とびまん型症例)を含むコホート研究を実施し、炎症関連IL10遺伝子多型に基づき4つのハプロタイプタグ単一塩基多型(htSNP)からなるひとつのハプロタイプブロック(野生型ハプロタイプアレルIL10-ATTAと変異型ハプロタイプアレルIL10-GGCGを形成する)を用いて、放射線とIL10ハプロタイプを組み合わせた場合の影響について調べた。IL10野生型ハプロタイプアレルは腸型胃癌のリスク因子であり、存在するアレル数に比例した影響を示したが、この野性型アレルはびまん型胃癌のリスク因子ではなかった。放射線と腸型胃癌リスクの間に有意な関連性はなく、放射線とIL10ハプロタイプの間に統計的な相互作用は見られなかった。一方、放射線とびまん型胃癌発生の間には関連があり、その関連性はIL10ハプロタイプに依存することが示唆された。以上の結果、IL10ハプロタイプが放射線関連胃癌リスクの個人差、特にびまん型胃癌の発生に関与する可能性が考えられた。 2.血漿中活性酸素(ROS)レベルとIL-6,TNF-α,C-反応性蛋白(CRP),赤血球沈降速度(ESR),IL-4,IL-10,および免疫グロブリン(Igs)の血漿中レベルからなる8種類の炎症関連サイトカイン/生体指標により、原爆被爆者の過去の放射線被曝と自然老化の影響を個々人について評価比較した。その結果、ROS,IL-6,CRP,およびESRの線形結合によって炎症状態を最もよく表すことができ、またそのスコアにより炎症に対する統計学的に有意な放射線と年齢の影響が明確に示された。これらの結果から総合的に判断して、放射線被曝が自然老化とともに原爆被爆者の持続的炎症状態を亢進している可能性が示唆された。
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