研究課題/領域番号 |
24390162
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研究機関 | 公益財団法人放射線影響研究所 |
研究代表者 |
林 奉権 公益財団法人放射線影響研究所, 放射線生物学/分子疫学部, 副部長 (70333549)
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研究分担者 |
徳永 勝士 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40163977)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ゲノム / 放射線 / 炎症 / 活性酸素 / 分子疫学 / 遺伝子多型 / 放射線感受性 / 免疫 |
研究概要 |
1. 原爆被爆者2,789名から得られた血液細胞内活性酸素(ROS)レベルに対する年齢と放射線被曝の影響、さらに、ROSレベルと免疫・炎症関連遺伝子多型との関連について調べた。その結果、ROSの中でもO2.-レベルはリンパ球と顆粒球画分で、ともに年齢と被曝線量により増加し、T細胞、特にCD8+ T細胞のO2.-レベルは年齢と被曝線量により増加した。細胞内ROSレベルと遺伝子多型について調べた結果、T細胞のO2.-レベルがIL6Rの遺伝子型によって有意に異なることを見出した。 2. IL6Rの遺伝子型別に結腸直腸がん発生リスクと放射線被曝との関係を調べた。その結果、健常者をIL6R遺伝子型により2群に分けたとき、IL6R-A/Aに比べてIL6R-A/GまたはIL6R-G/Gで血漿中sIL-6Rは有意に低値を示す一方、単球、顆粒球、リンパ球、T細胞、CD4+ヘルパーT細胞のmIL-6Rは高値を示した。 3. IMGコホートをIL6Rの遺伝子型2群と被曝線量3群(<0.005Gy“非被曝”、0.005-0.7Gyと>0.7Gy)の組み合わせに分けると、参照群(IL6R-A/Aで非被曝)に比べ、IL6R-A/GまたはIL6R-G/Gの遺伝子型と最も高い被曝線量群の組み合わせで、結腸直腸がんの相対リスクが最大となった(RR = 2.05)。 4. 放射線関連大腸がん症例についてSNP arrayを用いた網羅的がん関連遺伝子多型(SNP)の探索を行った結果、高線量被曝者で特にリスクが有意に増加する可能性のある28種類のSNPを見出した。これら候補遺伝子について、IMGコホートのDNA試料を用いて大腸がん発生と遺伝子型との関係及びそれらの関係に対する放射線被曝の影響について調査を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原爆被爆者の健康調査は2年に1度定期的に行われており、対象者の血液試料を用いた研究は当初の計画通りに行われている。SNP arrayを用いた遺伝子多型の網羅的解析は東京大学徳永教授との共同研究として行っており、予定通りの研究が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
SNP arrayを用いた網羅的解析によって見出された遺伝子多型について生物学的意義を加味しながら重点的に推進してゆく。具体的には見出された候補遺伝子に関連する免疫・炎症指標やDNA修復関連遺伝子と関係のある生物学的経路(biological pathway)について探索を行い、放射線関連がん発生に関係する経路を明らかにする。 これらのアプローチを総合して、疾患感受性、放射線感受性の個人差の背景となる遺伝的要因と放射線被曝の相互作用を解明することにより、放射線関連疾患の個別予防への基盤を構築する。 遺伝子多型と各免疫炎症関連生体指標データおよび生活習慣、環境要因、臨床データを総合して、本調査中に行った疾患の中で特定の炎症関連疾患の高危険群を明らかにするとともに、放射線被曝により炎症関連疾患のリスクが特に高くなる集団を特定する。研究対象者全員の遺伝子多型と炎症関連生体指標、ならびに放射線被曝や食生活等の生活環境に関する情報をデータベース化し、炎症関連生体指標のリアルタイムモニタリングによる放射線関連疾患の個別予防法の基盤を構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度行ったSNP arrayにより得られた結果から見出された候補遺伝子多型の測定を、次年度に行うSNP array解析の結果から得られる候補遺伝子とまとめて測定することにより経費を節減するため。 前年度行ったSNP arrayにより得られた結果と次年度に行うSNP array解析の結果から得られた候補遺伝子の測定をまとめて行う計画であり、その解析に必要な試薬購入に使用する予定である。
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