研究課題/領域番号 |
24390171
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
若林 一郎 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70220829)
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研究分担者 |
丸茂 幹雄 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (40333950)
東山 綾 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (20533003)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 末梢動脈疾患 / 動脈硬化 / 糖尿病 / 血中脂質異常 / 疫学 / リスク要因 |
研究概要 |
本研究は4年計画で実施する末梢動脈疾患に関する疫学研究であり、その2年目である今年度には、昨年度に引き続き兵庫県篠山市役所および丹南健康福祉センターの協力のもとで、40歳以上65歳未満の篠山市民に対する疫学調査事業を継続し、平成25年度は866名が参加した。そして各個人に対して生活習慣に関する問診および動脈硬化進展度に関する諸検査を実施し、そのデータを蓄積した。また今年度から新たに、末梢動脈疾患患者を対象にした疫学調査を山形済生病院(山形県山形市)にて、リスク要因である糖尿病患者を対象にした疫学調査を神戸徳州会病院(兵庫県神戸市)において、それぞれ開始した。さらに、来年度からは末梢動脈疾患の急性期患者を対象にした疫学調査を、兵庫医科大学病院循環器内科の協力を得て行う予定であり、相手方研究協力者との打ち合わせを行った。 一方、末梢動脈疾患などの動脈硬化性疾患のリスク要因として重要な血中脂質異常の指標に関する基礎研究を行った。Lipid accumulation product (LAP)は腹囲と中性脂肪値との積で求められる新しい指標で、冠動脈疾患や糖尿病のリスク予知に有用である。この指標のカットオフ値は知られていなかったため、ROC分析を行い、男性では37.2、女性では21.1が至適カットオフ値であることを報告した(Wakabayashi, J Atheroscl Thromb 2014, 21: 282-288)。本疫学研究においてもこれらの値をLAPのカットオフ値として適用することとした。また、末梢動脈疾患のリスク要因として、飲酒に関して文献調査による解析を行った。その結果、適正量の飲酒では末梢動脈疾患のリスクは低下するが、この関連性には喫煙状況やインスリン抵抗性による交絡の可能性を十分に考慮する必要があることを報告した (若林他. 日本アルコール・薬物医学会雑誌 2014, 49: 13-27)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度から新たに開始した一般住民対象の末梢動脈硬化疾患に関する疫学研究を継続し、さらに866名の調査データを収集し追加することができた。すでに患者に返却する一部の検査項目については測定を終えている。さらに今後対象者数を増やして妥当性の高い結果をめざす。また、今年度から他の2つのコホートでの臨床疫学調査も開始し、来年度からはさらに1つのコホートでの調査を開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降も一般住民対象の研究とともに、末梢動脈疾患の強いリスク要因である糖尿病患者グループ対象の調査および実際に末梢動脈疾患に罹患している患者対象の調査による臨床研究を並行して実施する予定である。そして末梢動脈疾患のリスク要因の解明と予防対策について、総合的に研究を推進していきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
一般に疫学研究では対象者の血液・尿検体を採取後、凍結保存する。対象者や患者に直ちに還元すべき検査項目以外の特殊項目については、検体を継続的に採取・保存し、それらをまとめて同時に測定する。これは測定誤差を少なくするために必要である。 本研究では動脈硬化関連疾患およびそのリスク要因に関する血液・尿検査および動脈硬化に関連する血中分子マーカーに関する検査の一部については、次年度以降に検体をまとめて測定する予定であり、その測定費用として次年度使用額を使用する予定である。
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