研究課題
HCV関連肝発癌モデルであるコア遺伝子Tgマウスを主に用いて研究を行なっている。本マウスではC型慢性肝炎患者肝臓と同じレベルのコア蛋白を肝臓で発現しており、組織学的な炎症不在の下に早期の肝脂肪化を経て肝細胞癌を発生する。この肝癌モデルマウスを用いて、①肝特異的activation-induced cytidine deaminase(AID)遺伝子発現マウスとのかけあわせ、②肝特異的AID遺伝子欠損(ノックアウト=KO)マウスとのかけあわせ、を行なって、肝発癌におけるウイルス因子との相互作用、相加・相乗作用について解析している。解析は、①酸化ストレス産生に対する両者の作用の解析、②microRNAを含む肝細胞遺伝子発現の包括的解析、③C型肝炎患者、HCVマウスモデルにおいて示してきた脂質代謝、糖代謝への影響の解析、④得られた解析データのC型慢性肝炎患者肝における確認である。H25年度は、HCVコア遺伝子発現マウスと肝特異的AID遺伝子KOマウスとの掛け合わせで得られたマウスstrain HCV-Tg/AID-/-の解析を行なった。HCV-Tg/AID+/+と比較して、20か月齢のHCV-Tg/AID-/-における肝発癌頻度には違いがなかった。HCV-Tg/AID+/+では、AID-/-マウスに比して肝組織所見がより強く、またサイトカイン発現も高度であった。また、AID遺伝子mRNAはマウス肝組織では発現が軽度であり、また肝実質細胞そのものでなく、非実質細胞(免疫細胞)で発現していた。HCV関連肝発癌においてAIDは直接的な役割を演じてはいないと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
肝特異的AID遺伝子欠損(ノックアウト=KO)マウスとのかけあわせについて、明確な結果が得られた。HCVコア蛋白による肝発癌において、AIDは重要な役割を果たしてはいないことが明らかとなったので、これを報告した(Nguyen T, Moriya K, Koike K, et al., Int Immunol 2014 Feb 25. [Epub ahead of print])。C型肝炎関連肝発癌においてHCVによって誘発される、あるいはベースに発現しているレベル程度のAIDでは、肝発癌に寄与していないことが明らかとなった。肝特異的AID遺伝子発現マウスとのかけあわせで得られたダブル・トランスジェニックマウスの解析も進行しており、達成度はほぼ100%と考える。
大きな変更はない。当初の予定通りに進めて行く。肝特異的AID遺伝子発現マウスとのかけあわせで得られたダブル・トランスジェニックマウスの解析を進めて行く。
コア遺伝子/AIDKOマウスの解析に時間を要したため、コア遺伝子/AIDダブルトランスジェニックマウスの解析が後回しとなっている(実験計画に遅れはない)。次年度使用額と合わせて平成26年度研究費を使用して、一気にコア遺伝子/AIDダブルトランスジェニックマウスの解析を進める予定である。
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