研究課題
われわれはゲノムワイド関連解析によりC型肝炎における肝発癌とMICA遺伝子多型が関連していることを明らかにした。そこで、C型肝癌におけるMICA発現調節機構を解明し、その発現調節を介した肝発癌抑止法を確立することを目的として本研究を推進している。1) 今までの研究から、C型肝癌と関連しているMICA上のSNPsがMICA発現量を規定していると考えられる。そこで、まずmircro RNA (miRNA) が標的とする3’-UTR領域のSNPの機能につき検討した。高発現型および低発現型SNPを有するMICAの3’-UTRをそれぞれルシフェラーゼレポーターベクターにクローニングし比較検討したところ、ルシフェラーゼ活性は低下するが、その程度にSNPによる違いはなかった。すなわち、MICA発現にはmiRNAが重要な役割を担っているが、3’-UTRのSNPはMICA発現量を規定しないと考えられた。引き続き、高発現型と低発現型のMICAのプロモーター領域をルシフェラーゼレポーターベクターにクローニングし検討したところ、高発現型のSNPを有するプロモーターにおいて、明らかに低発現型より高いルシフェラーゼ活性が得られた。原因SNPを同定するため、プロモーターのトランケーションや変異導入により、2 SNPsまで絞り込むことができた。2) MICA発現を増強する薬剤の探索を行った。MICAのプロモーター領域をクローニングしたルシフェラーゼリポーターベクターを用いて、肝癌細胞株(Huh7細胞、PLC/PRF/5細胞)の安定保有株を作成し、米国食品医薬品局(FDA)承認薬を用いてのスクリーニングを行った。その結果、複数のMICA発現増強薬が同定され、細胞毒性をもたらさない濃度での用量依存的なMICA発現増強を示す薬剤を見出した。本薬剤は抗腫瘍免疫療法としての肝発癌抑止薬、肝癌治療薬として期待される。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度の研究実施計画に掲げた課題のほぼ全てを行うことが出来た。
1) C型肝炎ウイルスがMICAを誘導するメカニズムを解明する。2) MICA発現誘導の違いをもたらす原因SNPを同定し、MICA発現誘導の違いをもたらす原因SNPに結合する転写因子を同定する。また、転写因子に基づくMICA発現誘導薬の探索を開始する。3) 同定したMICA発現誘導薬によるMICA発現誘導機構を解明する。また、同定したMICA発現誘導薬によるNK細胞の肝癌細胞に対する殺細胞効果増強を検討する。その結果を踏まえて、同定したMICA発現誘導薬による抗腫瘍効果についてマウスモデルを用いて検討する。同様に、その結果を踏まえて、 同定したMICA発現誘導薬による肝発癌抑止効果につき臨床的に検証する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件)
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