研究課題
我々は、独自に構築したウイルス培養細胞モデル、および薬剤スクリーニング技術を応用し、ウイルス感染ライフサイクルのすべてのステップを標的とした新規クラス抗ウイルス療法を創出するために研究を遂行し、本年度は下記の結果を得た。(1)臨床薬剤・生理活性化合物、多様志向性合成化合物(DOS)ライブラリー4046化合物のスクリーニングを遂行し、細胞毒性を示さずにレプリコン増殖抑制効果を示す化合物を23個抽出した。このうち、HCV-JFH1細胞培養系においてHCV増殖抑制効果を示す化合物を4種同定した。これらはHCV-IRES翻訳活性には影響せず、HCV増殖を特異的に阻害している可能性が示唆された。同定された4種の化合物それぞれとIFNおよびプロテアーゼ阻害薬(BILN2061)との併用効果をレプリコン細胞を用いて解析した。IFNとの併用では化合物A (N'-(morpholine-4-carbonyloxy)-2-(naphthalen-1-yl) acetimidamide, MCNA)が相乗効果、B、Cとは相加効果、Dとは拮抗効果であった。IFNとの併用では化合物Aが相乗効果、B、Cとは相加効果、Dとは拮抗効果であった。BILN2061との併用では化合物Bが相乗効果、A、Cとは相加効果、Dとは拮抗効果であった。HCVキメラリポーターレプリコン系、および蛍光蛋白発現HCV培養系を用いたウイルス侵入、増殖、分泌のすべてのステップを標的とした阻害薬のスクリーニング・アッセイシステムは、HCV生活環のあらゆるステップに対する阻害剤探索や薬効評価への応用が期待される。本研究で同定された化合物の作用機構の解析・小動物モデルを用いた効果・安全性の検証を進めることによりHCVの新規治療法開発に結びつくものと考える。以上から抽出された化合物、得られた知見を統合し、HCV増殖の分子レベルでの理解を深め、新規クラス抗HCV薬の開発・実用化に必要な基盤情報の蓄積を行う。
2: おおむね順調に進展している
研究代表者の新施設における研究環境は整備され、概要に記された結果を得ることができ、目的はおおむね達成された。
・本研究で同定・抽出された化合物、得られた知見を統合し、HCV増殖の分子レベルでの理解を深め、新規クラス抗HCV薬の開発・実用化に必要な基盤情報の蓄積を行う。
・平成25年度未使用額の発生理由:平成24年3月に研究代表者が当該施設に移動したにことに伴い、平成24年度において新たな研究環境の整備、研究設備備品の調達に時間を要したこと、これにより平成24-25年度に施行予定の薬剤探索研究からの候補薬剤の抽出が当初の予想より少なかったためである。上記の理由により当該年度の試薬、消耗品を使用した研究計画に遅れを生じたことによる研究費未使用額は 、平成26年度研究計画の遂行のための試薬、消耗品購入、外注検査費用に使用する予定である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)
Plos One
巻: 8 ページ: e82299
10.1371/journal.pone.0082299. eCollection 2013
巻: 8 ページ: e66255
10.1371/journal.pone.0066255
Journal of Virology
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10.1128/ JVI.02526-12
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