研究課題/領域番号 |
24390186
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中村 哲也 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 寄附講座准教授 (70265809)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 消化管上 / 組織幹細胞 / 細胞移植 / 大腸炎治療 |
研究概要 |
申請者は、正常な大腸上皮幹細胞培養の新技術をTMDU法(Tokyo Medical and Dental University Protocol)として確立し、マウス大腸幹細胞を無血清培地で、3次元的に、長期培養可能であること、そして本法では多分化能をもつ大腸上皮幹細胞を数の上で増やしうることを明らかにした。次に、この培養大腸上皮幹細胞を大腸傷害モデルマウスに移植する条件検討の結果、ドナー細胞が傷害部上皮を修復し、全ての分化細胞と増殖細胞を含む正常な大腸上皮を構築しうることを示した。さらに、1個の大腸上皮幹細胞から増やした培養大腸上皮を用いた移植によっても、傷害大腸上皮の再生が可能であることを初めて報告した(Yui et al. Nat Med 2012)。本申請研究においては、この成果をさらに発展させ、わずかな幹細胞を体外で増やし移植する大腸上皮再生治療の基礎解析を展開し、「組織幹細胞移植」で傷害上皮が修復される機構、およびこの細胞移植治療効率を高めるための検討を進めている。1)上皮傷害動物モデル作成とこれを用いた移植片生着効率評価技術の確立のプロジェクトでは、すでに新しい大腸上皮傷害マウスモデルを確立し、これへの移植実験を進めている。2)移植方法検討のプロジェクトでは、この新しいマウス移植モデルを利用し、培養細胞移植効率を最大限に高めるさまざまな条件の検討を進めている。 独自の成果に基づいて、その応用技術開発を目指した本研究を展開することは、消化管上皮傷害修復のための再生医療技術開発に重要な知見を提供するものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標として掲げた新規の移植モデルの確立に成功したのみならず、本モデルを用いて培養幹細胞移植が可能であるとの知見を既に得た。この結果をふまえ、「幹細胞移植による消化管上皮再生」の効率を高める条件検討にも予定通り着手した。当初に掲げた研究目的を順調に進めることにより、広く消化管上皮研究領域に有意義な知見を供与することが可能であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1)上皮傷害動物モデル作成とこれを用いた移植片生着効率評価技術の確立 a)新しい大腸上皮傷害マウスモデルの作製 独自の手法で増やした培養正常大腸上皮細胞が、マウス大腸炎において大腸組織に生着し、幹細胞を供給しながら半年を超える長期にわたって移植片として生着し続けることを明らかにした。平成25年度には、新規に構築した移植実験システムを利用し、この新規モデルにおける大腸粘膜修復過程の経時変化、再生過程の病理学的、分子生物学的解析を加える予定である。 2)生着効率改善を目指した移植方法の検討 平成24年度に検討し確立した大腸上皮傷害動物モデルとこれを用いた移植効率評価の実験システムを利用し、最大限に移植生着効率を高めるための検討を開始する。 すなわち、申請者が現在施行している経肛門的移植法を改良しつつ、本研究で確立したレンチウイルスシステムによる細胞可視化システムと動物内視鏡観察システムと組み合わせた移植片生着評価法を利用し、特に以下の項目を詳細に検討する。 i)移植のタイミングが生着に与える影響 ii)移植細胞の量と生着面積の相関 iii)移植細胞の調整方法による生着効率の変化
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画通り、平成25年度においては培養試薬、実験用マウス、分子細胞生物学実験試薬、抗体、免疫染色試薬、培養のためのリコンビナント蛋白など消耗品購入のために使用する予定である。
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