研究課題/領域番号 |
24390188
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
辻井 正彦 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40303937)
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研究分担者 |
竹原 徹郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70335355)
飯島 英樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90444520)
林 義人 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (80647123)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 薬剤耐性 / 薬剤感受性 / CTOS / バイオマーカー |
研究概要 |
大腸癌に対する抗腫瘍薬の感受性に関して、大腸癌組織からCTOSの形で得られた得られた腫瘍上皮細胞を用いて、種々の薬剤に対する感受性を検討し、臨牀経過と照合し、実際の臨牀での効果を反映できる検査法の開発を進めている。in vitroの細胞培養条件下の検討と、in vivoマウス皮下移植モデルを用いた検討とを比較したところ、化学療法薬の5FUやSN-38に関しては、in vivo、in vitro間で同様の結果が得られたが、抗体製剤cetuximabの薬剤感受性に関して、in vitro、in vivo間で乖離が認められた。現在臨牀データーと照合したところ、皮下移植腫瘍における薬剤感受性が臨牀データーと一致することが多く、in vivoでの検討が有用なものと考えられるが、時間・コスト面において不利益な点も多い。in vitroの培養系で、臨牀データーと同じような結果が得られるような検討法の開発を試みている。5FUなどの低分子物質に対しては、in vitro、in vivo間で同じような結果が得られるのに呈し、抗体製剤では、結果に乖離が認められた。CTOS培養条件下での細胞接着が薬剤感受性に関わっている可能性が考えられ、抗体製剤に関する検討で、in vitro培養条件の再検討を行っていることが、予定より遅延している点としてあげられる。 また、マウス皮下モデルを用いているが、より臨床経過を反映すると考えられる同所移植モデルを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)CTOSを用いたin vitroでの薬剤感受性:異なる症例由来のCTOS間で抗癌剤5-FU、および分子標的治療薬PI3K阻害剤LY294002の感受性に個人差が検出されることを確認した。しかし、抗体製剤cetuximabは、接着培養の条件では細胞傷害性を発揮するのに対し、CTOSに対しては細胞の増殖・生存には有意な影響を示さなかった。細胞間接着を阻害する条件下での検討では、cetuximabは抗腫瘍効果を示した。 2) マウス皮下移植モデルを用いたin vivoでの薬剤感受性:CTOSはマウス皮下移植作製に用い、腫瘍を形成したマウスに対して上記の抗癌剤もしくは分子標的薬による治療を行い、抗腫瘍効果を判定した。Cetuximabなどの抗体製剤の効果については未実施である。 3) in vitroおよびin vivoでの薬剤感受性の相関:in vitroとin vivoで、薬剤感受性に差が認められた。in vivoでの検討結果と臨床経過の間に相関が示唆されているので、in vivo の結果を相関するin vitroの培養条件を、細胞間接着を変化させ、検討している。 4)臨床経過と上記アッセイによる感受性プロファイルの相関:検体採取の後に化学療法を受ける症例については、実際の臨床経過から判定される治療効果と薬剤感受性プロファイルとの相関も検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
症例数を増やすとともに、臨床での治療効果予測が可能となるin vitro、in vivoでの薬剤感受性テストが可能となるように、①詳細な臨床データーの蓄積を続ける ②in vitroでの培養条件の検討(特に、細胞間接着を抑制した場合の薬剤の効果)③臨床に即したin vivoマウス移植モデルの作成 を実施する。 i) 培養条件、移植モデルを確立した後、薬剤感受性・耐性に関わる遺伝子発現・シグナル伝達機構・エピジェネティック変化を網羅的に解析する。ii) siRNAスクリーニング、BH3プロファイリング、chemical screeingから、腫瘍細胞の生存・増殖に関わる分子の同定を行う。iii) i)、ii)で同定した遺伝子・シグナル伝達機構の変化を、臨床検体で検証する。 iv) i)、ii)で同定した遺伝子のsiRNA、シグナル伝達の阻害剤のin vitro、in vivoモデルでの抗腫瘍効果を検討する。
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