研究課題/領域番号 |
24390192
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
筒井 裕之 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (70264017)
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研究分担者 |
絹川 真太郎 北海道大学, 大学院・医学研究科, 講師 (60399871)
石森 直樹 北海道大学, 大学病院, 助教 (70399848)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 心不全 / 心筋リモデリング / 慢性炎症 / ナチュラルキラーT細胞 / Th1/Th2バランス |
研究概要 |
本研究は、ナチュラルキラーT(NKT)細胞の機能低下に起因する炎症制御機構の破綻が、心筋炎症を遷延化・慢性化させ、心筋リモデリング・心不全の形成・進展に関与するという仮説を検証するとともに、NKT細胞の活性化による心筋組織における炎症制御という独自のパラダイムに基づく新たな心筋リモデリング・心不全の予防・治療法の開発を目指すものである。 本年度は、心筋リモデリングに及ぼす慢性炎症の制御因子としてのNKT細胞の役割について検討した。心筋梗塞(MI)後心不全モデルマウスを作成し、非梗塞部心筋から単核球を分離し、フローサイトメトリー法でNKT細胞を検出した。NKT細胞は偽手術(Sham)群心筋では極めて少数ながら存在し、MI7日後の心筋では2倍に増加した。NKT細胞を特異的に活性化するα-ガラクトシルセラミド(α-GC)投与(手術後1および4日目)により7日後のNKT細胞は著明に増加した。Shamマウスではα-GC投与28日後にはNKT細胞は元のレベルまで減少したが、MIマウスでは28日後もその増加が維持された。 MI後心筋組織では7日目にマクロファージやリンパ球浸潤が有意に増加し、α-GC投与によっていずれもさらに増加した。M1マクロファージやM2マクロファージおよびMCP-1やRANTES遺伝子発現はMIで増加しα-GC投与によりさらに増加した。α-GC投与によってInterferon-γ、TNF-α、Interleukin(IL)-6やIL-10遺伝子発現も有意に増加した。28日後では、MIでIL-10のみ増加し、これはNKT細胞の動態と全く一致した。 以上よりNKT細胞が炎症細胞浸潤およびケモカインやサイトカインの誘導を制御することにより心筋リモデリングおよび心不全の発症・進展に対して抑制的に作用することがあきらかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在まで研究は順調に進展しており、不全心筋における炎症遷延化とTh1/Th2バランスの変化の解析とともに、NKT細胞による炎症制御機構の解析を実施し、NKT細胞が心筋リモデリングの形成・進展に関与していることをあきらかにした。実際に、本研究の研究成果の一部は、既に学会・論文等で公表しており高い評価を受けている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に基づき研究をさらに進めるとともに、NKT細胞による炎症制御機構の解明を目指す。さらに、NKT細胞制御による心筋リモデリング・心不全の抑制効果の検討を進め、慢性炎症制御に基づく新たな心筋リモデリング・心不全の治療法の開発を目指した研究へと発展させる。 研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点はない。
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