研究課題
心不全の病態基盤は、心筋細胞肥大・細胞死や間質線維化からなる心筋リモデリングであるが、その形成・進展には心筋組織における慢性炎症が関与する。ナチュラルキラーT(NKT)細胞は、TNF-αやIFN-γなどの炎症惹起性Th1サイトカインとIL-10やIL-4などの炎症抑制性Th2サイトカインのTh1/Th2バランスを調節し、生体において炎症を制御するという極めて重要な役割を担っている。本研究の目的は、NKT細胞の機能低下に起因する炎症制御機構の破綻が、心筋炎症を遷延化・慢性化させ、心筋リモデリング・心不全の形成・進展に関与するという仮説を検証するとともに、α-Galactosylceramide (α-GalCer)を用いたNKT細胞の活性化による心筋組織における炎症制御という独自のパラダイムに基づく新たな心筋リモデリング・心不全の予防・治療法の開発を目指すものである。本年度は、心筋リモデリングに及ぼす慢性炎症の制御因子としてのNKT細胞の役割についての検討を進めるとともに、α- GalCer投与が梗塞後心不全モデルマウスの生存率が有意に改善し、心筋リモデリングおよび心不全の進展が抑制されることを確認した。また、このNKT細胞活性化による心保護的な役割はinterleukin-10 (IL-10) 遺伝子発現を介していた。さらに、α- GalCerは横行大動脈縮窄による圧負荷肥大心や冠動脈の一過性結窄による虚血再灌流障害に対して、心筋保護作用を有していることを新たに見出した。以上よりNKT細胞が炎症細胞浸潤およびケモカインやサイトカインの誘導を制御することにより心筋リモデリングおよび心不全の発症・進展に対して抑制的に作用することがあきらかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
現在まで研究は順調に進展しており、NKT細胞の機能低下に起因する炎症制御機構の破綻が、心筋炎症を遷延化・慢性化させ、心筋リモデリング・心不全の形成・進展に関与するという仮説は検証できた。α-GalCerを用いたNKT細胞の活性化による心筋組織における炎症制御という独自のパラダイムに基づく新たな心筋リモデリング・心不全の予防・治療法の開発も可能性がより現実のものとなった。実際に、本研究の研究成果の一部は、既に学会・論文等で公表しており高い評価を受けている。
当初の研究計画に基づき研究をさらに進めるとともに、NKT細胞による炎症制御機構の解明を目指す。さらに、NKT細胞制御による心筋リモデリング・心不全の抑制効果の検討を進め、慢性炎症制御に基づく新たな心筋リモデリング・心不全の治療法の開発を目指した橋渡し研究へと発展させる。今後は、樹状細胞を担体としたα-GalCer(α-GalCer/DC)による心不全抑制効果の検討に着手する。研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点はない。
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