研究課題
【背景】酸化ストレスは心血管疾患発症の強力な促進因子である。これまで、酸化ストレスによりサイクロフィリンA (CyPA)が血管平滑筋細胞より分泌され、酸化ストレス増幅の悪循環に寄与することを報告した。 【目的】心血管病の発症・進行における酸化ストレス分泌蛋白CyPAの役割および臨床的有用性を検討する。CyPA遺伝子改変マウスおよびその受容体欠損マウスを用い、詳細な分子学的基盤解明を行う。さらに、心血管系疾患患者由来の組織や血清を用いた発症前診断法の開発を目指す。基礎研究および臨床研究の両面から、心血管病の新しい診断・予防・治療法の開発を目指す。【結果】CyPA遺伝子欠損マウスおよび血管平滑筋特異的過剰発現マウスを用い、大動脈瘤モデル、頚動脈内膜肥厚モデル、動脈硬化モデル、心肥大モデルでの検討を行った。いずれのモデルにおいてもCyPAは心血管疾患発症に重要であり、動脈硬化進行や大動脈瘤形成において必須蛋白であることが分かった。また、心筋梗塞患者の冠動脈硬化病変の免疫染色により、不安定プラークの病変部に強いCyPAの発現が確認された。さらに、冠動脈の狭窄病変を有する患者において、末梢血CyPA濃度が健常者に比して有意に上昇していることが確認された。この末梢血CyPA濃度は冠動脈病変の重症度に応じて有意に上昇することも確認された。 【結論】CyPAは動脈硬化を促進する重要蛋白であると同時に、分泌蛋白としての特性から、新しい心血管疾患のバイオマーカーとして有用であることが示唆された。【学会・論文報告】以上の研究成果を、国内外の学会やシンポジウムで報告し(日本循環器学会総会シンポジウム、米国心臓病学会議、欧州心臓学会議)、平成26年度は計14本の英語原著論文発表を行った。さらに、新しい診断薬としての可能性につき特許申請を行い、国際段階で2015年2月に認められた。「サイクロフィリンAによる心血管疾患の検査方法」
2: おおむね順調に進展している
当初計画通りに解析を進めることが出来ており、計14本の英語原著論文発表や国際特許が認められたため。また、本研究を基盤に、基礎研究の臨床応用研究が進んでいるため。
本臨床研究では、すでに確立された測定システムを用いて、患者検体の測定をどこでも安全・確実に行うことのできる迅速診断キットの開発を進めている。さらに、以下の検討を行う。1.各種心血管疾患における血漿CyPA濃度の網羅的解析(1)冠動脈狭窄患者の治療介入による血漿CyPA濃度の変化さらに、各種の内服治療により、血漿CyPA濃度および炎症細胞Rho-kinase活性がどのように変化するのかを確認する。(2)大動脈瘤・心筋肥大・心不全患者の内科的・外科的加療後の血漿CyPA濃度の変化 大動脈瘤の手術後の血漿中CyPA濃度の変化を評価する。心不全の加療により、血漿中CyPA濃度がどのように変化するのか、同一患者の時間的変化に関する評価を行う。(3)インフォマティックス技術を用いたアレイ解析と新規バイオマーカー探索 サイトカイン・アレイで得られた情報をインフォマティックス技術で多角的に解析し、各種の疾患発症と相関関係を示す新しい蛋白の探索を行う。2.CyPA受容体遺伝子改変マウスを用いた、新しい治療薬開発のための基礎研究 (1)酸化ストレスによる血管内皮機能制御機構(2)CyPA/Rho-kinase系の大動脈瘤拡大・破裂における役割
平成26年度中に統計解析の研究結果をまとめ、国内外の学会において発表する予定であった。しかし、平成27年1月~2月の研究の実施に予定以上に時間を要したため、平成26年度中に研究結果を得られたものの、成果発表に至らなかったため、未使用額が生じた。
助成期間に行った多くの研究成果について、4月の国内学会(大阪)と5月の国際学会(サンフランシスコ)で発表したい。1.日本循環器学会総会(2015年4月24-26日・大阪)2.ATVB/PVD 2015 Scientific Seesion(2015年5月7-10日・アメリカ心臓協会・サンフランシスコ)
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すべて 雑誌論文 (16件) (うち査読あり 16件、 オープンアクセス 16件、 謝辞記載あり 16件) 学会発表 (6件) 図書 (2件) 備考 (1件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
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